理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 340
会議情報

骨・関節系理学療法
強度の膝屈曲拘縮を伴う下腿切断患者が義足歩行を獲得した1症例
*宮坂 由佳理藤沢 美由紀松田 英希水野 路子山中 崇
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】
 高齢者の下肢切断は多くの併発疾患が存在し、義足歩行獲得に難渋することがある。今回、膝関節の屈曲拘縮が著しい下腿切断患者が、義肢に特別な工夫を加えることで、義足歩行を獲得した症例を経験したので報告する。

【症例紹介】
 83歳、男性。閉塞性動脈硬化症により、2003年7月1日、右下腿切断術を受けた。既往歴は、67歳:右大腿骨頚部骨折、70歳:肺気腫(在宅酸素療法中)、80歳:人工ペースメーカー、左大腿骨頚部骨折等がある。
【初期評価(7月31日)】
(切断側の状態)1.断端:膝裂隙~断端までは18.0cm、断端成熟良好、幻肢痛なし。2.ROMは膝関節伸展‐60°、筋力は3~4。(ADL)切断前から活動性は高くなかったが、更に立位保持に両上肢支持が必要となり、自立度は低下し、移動は車椅子となった。

【経過】
 7月31日より断端、残存機能訓練開始。8月18日、bent knee型のパイロン義肢が完成し、平行棒内にて義足歩行訓練を開始したが、より実用的な歩行を希望されたため、 8月25日、PTBソケット、大腿コルセット、ダイヤルロック付き膝継手を持つ下腿義足に処方を変更。8月30日、仮義足作製中に当院退院し外来通院へ移行。9月8日に仮義足が完成、11月29日には本義足が完成した。現在も通院による理学療法を継続しており、歩行能力は、交互式歩行器を使用し監視レベルで約20m可能となっている。

【考察とまとめ】
 近年、切断の原因は血行障害が圧倒的で、60歳以上の割合が増加し、多くの合併症を持つ切断例も増え、義足歩行に至らない症例もある。本症例においても両膝関節の屈曲拘縮をはじめ重複した障害を有しており、義足の作製、歩行は困難視された。bent knee型のパイロン義肢は、外見、重量、装着の問題に加え、残存している右膝関節の周囲筋筋力、膝のROMが有効に使えず、エネルギー効率の悪さという欠点があったため、膝継手付きPTBソケットに変更し、義足歩行訓練を行った結果、義足歩行を獲得することができた。
 今回のPTB下腿義足は、膝に重度の屈曲拘縮があるため、体重支持面は主に膝蓋腱と下腿前面であった。膝継手はROMの改善に対応するためダイヤルロックを使用した。結果的には10°の改善を得た。足部は、高齢であり活動性も低いため、安定性の高い単軸足部を選択した。大腿コルセットは体重支持・懸垂に作用し、側方の安定性にも寄与している。装着はbent knee型のパイロン義肢に比べ容易となった。今後は、切断前の様に自宅でのトイレ歩行を目標に理学療法を進めていきたいと考えている。
著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top