抄録
【はじめに】
秋田赤十字病院における人工膝関節置換術(以下、TKA)のクリニカルパス(以下、パス)は平成14年6月から導入されているが、片側手術(以下、片側)と両側同時手術(以下、両側)は同一のパスを使用している。術後3から4週を退院の目安として理学療法が行われるが、果たして同一パスの使用で良いのか少なからず疑問を抱くことがある。今回我々は片側と両側の比較からパスの妥当性を検討したので報告する。
【対象】
平成14年6月から平成15年12月の1年7ヵ月間に、当院整形外科でTKAを受け理学療法が施行された46例67膝を対象とした。片側は25例25膝、両側は21例42膝であった。片側ずつの両側手術を施行した者は1例であったが、最初の手術から3年以上経過しており今回は片側として分類した。
【方法】
片側と両側のそれぞれにおいて、手術後入院日数、手術後膝装具除去日数、膝関節可動域・筋力、退院時歩行能力について後方視的に調査した。膝関節可動域・筋力については退院時および手術後3カ月を超えた時点(以下、経過観察時と略す)での測定値を調査した。手術後入院日数、手術後膝装具除去日数、膝関節可動域・筋力については統計学的解析にMann-WhitenyのU検定、歩行能力についてはカイ2乗検定を用いた。
【結果】
手術後入院日数の平均は片側28.8日、両側33.7日で、中央値の比較については片側で有意(P<0.05)に短かった。手術後膝装具除去日数の平均は片側15.0日、両側15.2日で、中央値の比較については両群間に有意な差は認められなかった。膝関節可動域において、伸展域中央値の比較については退院時、経過観察時の両時期とも両側で有意(P<0.01)に伸展域が大きかった。一方、屈曲域中央値の比較については退院時、経過観察時の両時期とも両群間に有意な差は認められなかった。膝関節筋力において、伸展筋力中央値の比較については退院時、経過観察時の両時期とも両群間に有意な差は認められなかった。一方、屈曲筋力中央値の比較については退院時片側で有意(P<0.05)に屈曲筋力が強かったが、経過観察時においては両群間に有意な差は認められなかった。また、歩行能力においても両群間に有意な差は認められなかった。
【考察】
今回の対象において、退院時歩行能力については両群間に差は認めなかった。また、経過観察時の伸展可動域に有意差が認められたが両側の可動域が大きい結果であり、経過観察時の運動機能においては同一パス使用で問題ないことが示唆された。退院目安に幅をもたせることは厳密にはパスとは言えないかもしれないが、片側・両側の手術の違いや術前歩行能力・合併症などの有無にかかわらず使用できる点においては妥当なパスと考えられた。