抄録
【目的】一次性変形性膝関節症(膝OA)は,加齢や性差,肥満などがその発症要因とされている.また膝関節の内反変形を生じることが多く,この下肢アライメント異常は,荷重に対する力学的負荷を変化させ,膝OAの増悪要因とされる.今回,膝関節周囲の骨皮質幅を測定し,変形性膝関節症と骨皮質幅との関連を検討したので報告する.
【対象と方法】新潟県松代町において,1979年以来7年ごとに住民膝検診を行った.検診では,医師による問診,視触診,身体計測及び立位膝前後X線撮影を行った.今回は2000年7月に行われた第4回時の検診受診者1260名(男性549名,女性711名)のうち,以下のX線測定が可能な男性396名(年齢:60歳~88歳),女性527名(年齢:60歳~86歳)を対象とした.骨皮質幅及び大腿脛骨角(FTA)の測定は,検診時に撮影された立位膝前後X線フィルムをコンピュータに取り込み,同一検者が画面上でディジタイズを行い測定した.骨皮質幅の測定方法は,大腿骨は近位側に顆間部最大径を,脛骨は遠位側に関節面幅を求め,それと同距離に平行線を引き,その線上での内側,外側の骨皮質幅と,骨幹幅を求めた.また骨幹幅に対する内側及び外側の骨皮質幅の割合を求め,男女別に年齢群別,膝OA grade別,FTA群別に分け,検討を行った.年齢は60歳から5歳刻みの5群とし,各群間で検討を行った.膝OA grade分類はKellgren-Lawrenseの分類に準じ,0から4の5段階に評価し,0,1群,2群,3以上群の3群に分け,検討を行った.FTAは全測定値から中央値を算出し,2群に分けて検討を行った.統計処理は,対応のないt検定及び分散分析を行い,5%を有意水準とした.
【結果】年齢群別の検討では,加齢に伴う骨皮質幅割合の減少が男性は脛骨の外側で認められ,女性は大腿骨の内側,外側ともに認められた.膝OA grade別の検討では,男性では大腿骨,脛骨ともgradeにおける差が認められなかったが,女性ではgradeが高い群において脛骨の内側骨皮質幅割合が有意に増加していた.FTA2群の検討では,男性は大腿骨,脛骨とも骨皮質幅割合の変化は認められなかったが,女性ではFTAの大きい群において脛骨の内側骨皮質幅割合が有意に増加していた.
【考察とまとめ】骨量は加齢により徐々に減少し,皮質骨では内膜側から吸収され,骨膜が薄くなることが知られている.今回の結果では,骨幅において加齢とともに増加している傾向は見られたが,骨皮質幅の割合は,減少していた.一方,膝OAの病態で骨粗鬆症との関連が問題となっている.骨皮質幅の割合については骨粗鬆症の評価とする検討もあるが,これらを用いた検討を含め膝OAと骨粗鬆症についての関連は明確ではない.今回の結果からgradeとの関連で,脛骨の内側骨皮質幅割合が増加する傾向が認められた.よって,内反変形による内側への荷重ストレスとの関連が示唆され,膝OAの進行に対する力学的検討の重要性を示したものと考える.