抄録
【目的】
挙上,外転,結髪動作および結帯動作に内外旋方向の動きが関与していることはよく知られているが、患者にどのような影響を及ぼすのかという点に関する報告はない。今回,内外旋角度が肩関節周囲の自覚症状と関連があるかどうかについて検討したので報告する。
【対象】
対象は肩関節に器質的な障害がない20歳から31歳の成人で,男性6例12肩・女性21例42肩であった。これらを中等度以上の肩こりや肩関節を中心とする違和感を訴える群(以下S群)と無症状の群(以下N群)に分けた。S群は男性5例9肩・女性4例8肩,平均年齢は26.0歳(21歳から30歳)であった。N群は男性2例3肩・女性17例34肩,平均年齢は22.8歳(20歳から31歳)であった。
【方法】
患者を仰臥位で膝関節を最大屈曲位とした体位で,肩関節90°外転位・肘90°屈曲位で前腕部の重さのみで外旋および内旋させ水平面と前腕長軸とのなす角をそれぞれゴニオメーターで測定した。この時の外旋角度をcom.ER,内旋角度をcom.IRと定義した。次に肩峰および肩甲骨下角を固定した上で,上記と同様の方法で外旋および内旋角度を測定し,それぞれtru.ERとtru.IRと定義した。com.ERとcom.IRの角度を加えたものをcom.range,tru.ERとtru.IRの角度を加えたものをtru.rangeと定義して比較検討した。
【結果】
S群のcom.ERは87.1°±11.6°,com.IRは57.1°±13.4°,com.rangeは163.8°±26.3°だった。S群のtru.ERは76.8°±15.5°,tru.IRは36.2°±13.5°,tru.rangeは112.9°±24.1°だった。
N群のcom.ERは94.6°±7.8°,com.IRは66.9°±12.4°,com.rangeは176.8°±14.5°だった。N群のtru.ERは82.2°±8.6°,tru.IRは43.1°±11.4°,tru.rangeは125.3°±15.9°だった。
S群とN群の2群間においてcom.rangeでは有意差を認めなかったが,tru.rangeでは有意にS群の動きが少なかった(p<0.05)。
【考察】
今回測定したtru.rangeは肩甲上腕関節の内外旋方向の可動域を示し ,com.rangeは肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の可動域を加えた動きを示している。したがって, S群とN群間においてtru.rangeで有意差を認め,com.rangeでは有意差を認めなかった今回の結果から,肩に何らかの愁訴がある場合の内外旋方向の動きは肩甲上腕関節自体の動きは制限され,肩甲胸郭関節の動きで代償していることが分かった。