理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 381
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骨・関節系理学療法
肩甲上腕関節のモビライゼーションが棘上筋腱縫合部に与える力学的効果
*村木 孝行宮本 重範宮坂 智哉内山 英一鈴木 大輔青木 光広
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抄録
【目的】肩腱板縫合術後に早期理学療法を行う場合、腱縫合部への過剰なストレスを避けながら運動を行い拘縮を予防することが重要である。そのためには、ROM運動や関節モビライゼーションにより腱縫合部にどの程度のストレスが加わるかを考慮する必要がある。しかし、ROM運動が腱縫合部を伸張する程度を調べた報告はあるが、関節モビライゼーションに関する調査報告はない。本研究の目的は新鮮凍結遺体肩を用い、肩甲上腕関節モビライゼーション時の腱板縫合部の伸び率を測定し、腱縫合部における関節モビライゼーションの効果と安全性を検証することである。
【方法】実験には肩関節に損傷や変形のない新鮮遺体9肩(平均死亡年齢80歳)を用いた。実験は胸郭から離断した上肢標本の肩甲骨をジグに固定して行った。さらに断裂腱板の縫合術を想定し、棘上筋腱を大結節より幅2cm、長さ1cmで切除して腱板縫合術を行った。測定肢位は肩甲骨面挙上0°、30°の2肢位とし、各肢位で牽引(Grade3)、下方・前方・後方すべり(MaitlandのGrade3)のモビライゼーション4手技を行った。さらに、棘上筋腱が伸びるとされる内旋と伸展位内転肢位でも測定した。腱縫合部の伸びは大結節と腱遠位端に設置したLEVEX社製パルスコーダーを用いて測定し、開始肢位(挙上0°、回旋中間位)からの伸び率(正の値は伸張、負の値は弛緩を表す)で表した。また、統計処理には反復測定の二元配置分散分析と多重比較検定(ともに危険率5%未満)を用いて挙上角度と手技について検討した。
【結果】挙上0°肢位でのモビライゼーション手技による腱縫合部の平均伸び率は牽引10.3±11.7%、下方すべり9.4±10.2%、前方すべり10.3±13.5%、後方すべり9.4±10.9%であり、すべて縫合部を伸張していた。さらに伸展・内転肢位の平均伸び率は37.0±31.3%と全てのモビライゼーション手技より有意に大きかったが(p<0.05)、内旋肢位は2.2±13.8%であり有意差がなかった。挙上30°肢位では牽引 -11.2±8.4%、下方すべり -7.9±9.2%、前方すべり -13.1±13.1%、後方すべり -13.7±9.1%であり、すべて挙上0°での手技より弛緩し、挙上0°でのモビライゼーション手技や内旋、伸展位内転肢位での平均伸び率より有意に小さかった(p<0.005)。またいずれの挙上肢位においてもモビライゼーション手技間に有意差はなかった。
【結論】腱板縫合術後に肩関節内旋が禁止される期間では、腱板に緊張が加わらない挙上30°での肩甲上腕関節のモビライゼーションが安全である。また、伸展位内転が可能な時点では挙上0°でのモビライゼーションは安全に行える。
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© 2005 日本理学療法士協会
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