理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 385
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骨・関節系理学療法
スリングエクササイズによる大腰筋への影響
*清水 広記佐藤 成登志遠藤 剛立石 学山崎 直美村越 琴江佐藤 美緒子高野 義隆
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抄録
【はじめに】膝や腰に痛みを訴える患者には、動的アライメント異常による局所への過剰ストレスが作用し痛みを生じているケースが多い。我々はその異常なストレスを軽減させる姿勢・動作を獲得することが根本的治療につながると考えている。大腰筋は身体重心をまたぐ筋であり、股関節屈曲の作用のみではなく腰椎―骨盤―下肢の安定化、骨盤位制御能力に関与していると言われており、姿勢や動作遂行の大きな要因となっている。実際、我々は臨床場面で大腰筋の活性化を目的にスリングを用いた治療を行っており、痛みが軽減するケースを経験している。そこで今回、スリングを用いたエクササイズ(以下、エクササイズ)による大腰筋への影響を検証した。
【対象・方法】対象:健常成人5名(男性2名,女性3名)で平均年齢29.6歳。方法:評価項目は1)股関節自動屈曲角度2)立ち坐り動作時の骨盤傾斜角度とした。股関節自動屈曲角度は、踵、殿部、胸椎部、頭部を壁に接したまま立位を保持し脚を挙げる。このときの最大自動屈曲角度を測定した。立ち坐り動作時の骨盤傾斜角度は、非利き脚につけたマーカーをデジタルカメラによって矢状面軸から二次元的に撮影した。マーカーの位置は、外果・膝関節裂隙中点・大転子・上前腸骨棘・上後腸骨棘・剣状突起最下部・第9胸椎棘突起とした。エクササイズは端坐位にて両足底を接地した状態とし、動作は骨盤治療吊り具に両上肢を伸展位にてのせ骨盤前傾運動を行った。練習を行い、正確な運動が行えていると判断したのち、3分間のエクササイズを行った。エクササイズ施行前後の変化を各評価項目について比較・検討した。
【結果】エクササイズ前の股関節自動屈曲角度は利き脚平均94.4度、非利き脚平均94.0度であった。エクササイズ後の屈曲角度は利き脚平均103.2度,非利き脚平均101.2度で、エクササイズ後に利き脚8.8度、非利き脚7.2度の増大を認めた。また立ち上がり時の骨盤前傾角度の増大や坐りこみ時の骨盤後傾角度の減少、後傾開始時期の延長が見られた。さらに坐りこみ時に「坐り易くなった。」との意見が聞かれた。
【考察】股関節自動屈曲角度は5名中5名が増大する結果となった。これは測定側の大腰筋の効率的な収縮が可能になったためと考えられる。さらに支持側の骨盤周囲筋が活性化され安定した片脚立位がとれたためと考えられる。立ち坐り動作では5名中4名に上記のような骨盤位制御能力の向上が見られた。変化の見られなかった1名は、エクササイズ後に腰に張りを訴えたこともあり背筋の過剰努力が原因と考えられる。以上のことよりスリングを用いたエクササイズが大腰筋の効率的な筋収縮のみでなく、片脚立位安定化のための骨盤周囲筋の活性化、骨盤位制御能力の向上に関与していることが示唆された。
 今後の課題は、治療効果の更なる検討と適応疾患の特定である。
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© 2005 日本理学療法士協会
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