理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 391
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骨・関節系理学療法
股関節自動外転運動パターンの特徴
―SlingとSliding Boardの比較―
*高木 貴史宮本 重範
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抄録
【目的】近年,理学療法においてSlingを用いた運動療法が盛んになってきている.しかし,各々の運動に関する科学的検証が十分とは言えない.そこで本研究では従来股関節術後の股関節外転運動に有効であるといわれているSliding BoardとSlingを用いた股関節の自動外転運動について,表面筋電図と股関節外旋角度を調べた.それぞれを比較し運動方法による外転運動パターンの特徴を把握することを目的とした.
【方法】股関節に傷害歴のない健常男性8名(平均年齢23.4±1.78)を対象に実験をおこなった.器具を用いない股関節自動外転運動(以下Control)時の股関節の回旋角度と股関節周囲筋の活動電位を基準として, Sling(NORDISK THERAPI社製)を用いた場合と,Slingに1kgの重りを負荷(以下SW)した場合,Sliding Board(以下SB)を用いた場合の違いについて,各々の外転運動時の大殿筋・中殿筋・大腿直筋・長内転筋の筋活動と股関節の内旋・外旋角度を比較・検討した.筋電計はNEC社製SYNA ACT MT 11を用い,波形の解析にはBIMITASUII(KISSEI COMTEC社製)を用いた.Sling は,hunging point(ロープを吊るしている点)とmoter axia(運動を行う関節の軸)を等しくし、sling point(スリングで吊るす体の部位)は踵とした.股関節の外旋角度の計測は,外転保持区間域でのプラットフォームに対する足関節の傾きをデジタルカメラにて写真撮影し, scion imageソフトを用いて角度を測定した.統計処理は筋活動に関しては三元配置分散分析,Friedman検定,Wilcoxonの符号付順位検定を行った.また股関節外旋角度と筋の活動電位の関係はPearsonの相関係数を用いた.すべて有意水準はP<0.05とした.
【結果】SBに比べてSlingは中殿筋・大腿直筋・長内転筋において運動中の活動電位が小さかった.しかし最大外転保持位では中殿筋の活動電位はSBに比しSling で有意に高い値を示した.また,股関節の外旋角度はControl,SB,SW,Slingの順に小さくなる傾向が認められた.このことは股関節外旋運動が大きくなると大腿直筋が有意に働くとことでも示された.
【考察】Sling を用いれば選択的に筋を活動させ,目的とする筋に対する効果的なトレーニングができ,更にSBに比べ運動中に目的としない筋の筋活動が低く抑えられることが分かった.それゆえ,術後急性期における愛護的なROM維持・拡大運動と筋の協調性の回復を目的とした運動療法ではSlingを用いたほうが適切で効果的に施行できることが示唆された. 従って,Slingを用いると股関節術後の比較的急性期から股関節に対して積極的な運動療法を進めることができるものと考える.
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© 2005 日本理学療法士協会
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