理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 409
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骨・関節系理学療法
慢性腰痛症者に対する背筋力増強運動の効果
―E/F比の変化に着目して―
*馬淵 美也子染矢 富士子
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抄録
【目的】E/F比は体幹伸展力と屈曲力のバランスの指標として用いられているが、健常者と比較して、腰痛症者のE/F比の低下が報告されている。このことから、E/F比が低下している腰痛症者に対しては、特に背筋力強化を中心とした運動が有効と考えられるが、その効果の報告例は少ない。本研究では、臨床上可能な背筋力増強運動が、軽度慢性腰痛症者のE/F比、疼痛強度、機能障害に与える影響を調べ、運動の効果を検討した。
【対象】腰痛の既往があるが、通常の日常生活が可能な女性13名。年齢27.4±8.5歳(平均±SD)、身長161.4±4.5cm、体重53.5±7.3kg、腰痛癧7.5±6.7年であった。測定に際して被験者には実験趣旨、安全性について説明し、同意を得た。
【方法】体幹伸展と屈曲筋力を、サイベックスを用いて測定した。測定可動域は伸展0度から屈曲60度とし、角速度60度/秒で5回の反復運動を行い、ピークトルク値(以下PT値)の比をE/F比として求めた。また、背筋訓練は(1)ブリッジ(2)四つ這い位での一側上肢、対側下肢水平挙上(3)腹臥位での両下肢挙上(上前腸骨棘より上部体幹をベッドに接地)であり、各運動は挙上動作が終了してから5秒間静止保持し、(1)(3)は10回反復、(2)は左右を1セットとし、5回反復させた。訓練頻度は週3回8週間で、計24回施行した後、最終測定を行った。期間中6~8回を監視下で行い、適宜修正指導した。腰痛の主観的疼痛強度をVAS(0~10)、機能障害をOQ(Oswestry low back pain disability questionnaire)を用い、訓練前後で評価した。訓練前後の各値の検定にはt検定を用い、有意水準は0.05とした。
【結果】E/F比(初期1.13;最終1.16)は増加の傾向は見られたが、有意差は認められなかった。体幹伸展(初期115.5±27.8Nm;最終128.7±31.2Nm)、屈曲(初期102.2±20.1Nm;最終111.1±22.2Nm)のPT値は有意に増加した。OQ(初期6±3.7;最終4.8±4.1)は有意に減少した。VAS(初期0.7±1.2;最終0.5±1.1)は減少する傾向を示したが、有意差はなかった。
【考察】本研究では背筋力強化を目的とした運動が、E/F比に及ぼす影響に着目したが、E/F比は有意な増加をみせなかった。この理由として、対象の初期段階のE/F比(1.13)が先行文献で示された女性腰痛群の値(0.97、0.84など)よりも高く、腰痛の程度が軽度であり、E/F比が低下していなかったことが考えられる。しかし、機能障害を表すOQが運動後に有意に低下したことは、運動により腹筋、背筋の共同収縮が促され、結果として屈曲、伸展の両PT値の増加につながり、腰部の安定化に働いたのではないかと考えられる。
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© 2005 日本理学療法士協会
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