理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 936
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骨・関節系理学療法
自律神経機能障害の実態
―健常者と腰椎疾患患者との比較―
*青木 隆加藤 太秀金久保 朋美米津 健一新井 めぐみ中村 絵里飯島 一樹別府 謙一
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抄録
【目的】
腰椎疾患には、自律神経機能障害(以下自律機能障害)のある人を多く見かける。自律機能障害は、ニューロパシーの1つとして報告されており、脊椎症が最も多い原因であるといわれている。しかし、具体的な割合や程度、男女差などに関する報告はほとんど見当たらない。本研究の目的は、健常者と腰椎疾患患者を調査し、自律機能障害の実態を明らかにすることである。
【対象】
症例は113名、健常群58名(男性28名、女性30名)、腰椎疾患群55名(男性28名、女性27名)で、平均年齢52±16歳であった。健常群は、腰椎疾患の既往がなく、今まで日常生活に支障をきたす、腰痛・下肢痛のない人とした。腰椎疾患群は、現在病院で腰痛・下肢痛の治療をしている人とした。また、外傷で治療をしている人は除外した。
【方法】
診断名などの一般情報と自律機能障害について調査用紙を作成した。自律機能障害は、腰足の冷え、足の発汗異常、下肢の皮膚栄養異常、下肢の脱毛、足の爪異常、涙・唾液の分泌異常の6項目とした。調査方法は、インタビューによる各項目への質問および視診とした。症状の程度(軽度、中度、重度)は、研者の基準と患者本人に判定させた。また、調査は同意をえてから行いすべて同一研者が行った。統計学的手法は、Fisher検定およびMann- Whitney検定を行い、危険率5%未満とした。
【結果】
自律機能障害は、健常群82.8%、腰椎疾患群94.5%で有意に多かった。(P<0.01)自律機能障害数は、健常群1.5項目、腰椎疾患群2.3項目で有意に多かった。(P<0.01)腰足の冷えは、健常群13.8%、腰椎疾患群34.5%、足の発汗異常は、健常群3.4%、腰椎疾患群18.2%で両項目とも有意に多かった。(P<0.05) 軽度の症状は両群で多く、中度、重度は腰椎疾患群で多い傾向であった。また、腰椎疾患群は、腰足の冷えの重い人が有意に多かった。(P<0.01)男女の比較は、両群とも男性下肢の脱毛が有意に多かった。(P<0.01) その他の項目で男女差はなかった。
【考察】
自律機能障害は、健常者、腰椎疾患患者ともに認めた。腰椎疾患患者は、腰足の冷え、足の発汗異常の割合や障害項目数が多く、症状の程度も重度傾向だった。このことから、腰椎疾患患者は健常者より多彩な自律機能障害が現れると考える。また、健常者で自律機能障害が見られたことは、潜在的な脊椎症が多いのではないかと思われる。男女の比較は、両群とも男性下肢の脱毛が多い結果となったが、女性下肢の脱毛状態、程度の判定は難しかった。これらを考慮し、他の項目で男女差のないことから、自律機能障害は性別に関係ないと考える。今回の研究から、健常者の自律機能障害について認識を強める必要性を感じた。また、腰椎疾患患者では病態をさらに深めることができ、今後の治療方針に役立つと考える。
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© 2005 日本理学療法士協会
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