理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 938
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骨・関節系理学療法
人工股関節置換術(THA)術後の荷重時期に関する検討
*岡元 紗矢香佐々木 涼子秋元 博之
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抄録
【目的】人工股関節置換術(THA)の術後には、ある程度の免荷期間が設けられていたが、動物実験と臨床研究の結果をもとに近年可及的早期荷重が行われるようになってきた。そこで、荷重開始時期が経年的にどの程度短縮されているのかを調査し、術後早期荷重の有用性を検討する目的でTHAを施行された患者を検討した。
【方法】対象は、最近10年間に青森県立中央病院にてTHAを施行された患者149例(平均年齢63±10歳)であった。症例数がほぼ均等になるよう、手術年代ごとに3群に分類し、1993~1997年までに手術を施行した54例をa群、1998~2000年までの48例をb群,2001~2002年までの47例をc群とした。カルテから、年齢、性別、身長、体重、Body mass index(BMI)、罹病期間、術前の日本整形外科学会股関節機能判定基準(以下JOA score)、脱臼の有無、術後の荷重状況、在院日数、退院時の状態を調査した。また、手術記録より骨セメント使用の有無及び臼蓋骨移植の有無とその範囲を調査した。統計学的処理は分散分析と回帰分析を行い、有意水準を5%未満とした。
【結果】年齢、男女比、身長、体重、BMI、罹病期間、術前JOA score、自宅退院の割合、退院時歩行状況は、3群間で有意差を認めなかった。平均荷重開始時期と全荷重時期は、a群では4.8±1.9週,8.1±2.8週、b群では5.1±2.9週,7.8±3.7週、c群では3.3±1.4週, 5.8±2.5週であり、c群で有意に短縮していた(p<0.01)。また、荷重開始時期と全荷重時期には強い相関が認められた(r=0.87,p<0.01)。臼蓋骨移植の有無における荷重開始時期は、骨移植併用例では3群間に有意差は認められなかったが(p=0.40)、骨移植非併用例ではc群でより早期に(p<0.01)荷重を開始していた。セメント使用の有無における荷重開始時期については、セメント使用例では、a群に対しc群で荷重開始の早期化が認められた(p<0.01)。セメント非使用例においてもc群でより早期に(p<0.01)荷重を開始していた。そして、在院日数は荷重開始が早いほど短縮していた(r=0.65,p<0.01)。
【考察】臼蓋骨移植例での荷重開始と全荷重時期の短縮は認められなかった。早期に荷重すると移植骨の圧壊が起こるために、ある程度の免荷期間が設けられたものと考えられる。セメント非使用例における早期荷重はbone ingrowthを阻害すると考えられ、従来は6週程度免荷していた。近年、早期荷重を行ってもコンポーネントの沈下が起こらないことが報告され、医療経済的問題の面からも、今後はさらに荷重開始時期が早まることが予想される。短期間で歩行能力や日常生活動作の獲得を目指さなければならず、理学療法士には正確な知識と技術をもった対応が求められる。
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© 2005 日本理学療法士協会
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