抄録
【はじめに】近年、高齢化社会を背景に大腿骨頚部骨折は増加の一途をたどっている。急性期病院においてはクリニカルパス(以下パス)が積極的に導入され、在院日数の短縮化が進められている。しかし、パスの設定期間以上の長期にわたるリハビリテーション(以下リハ)が必要なケースも多く、後方のリハ病院あるいは病棟が患者の機能回復、ADL向上に向けて果たす役割は大きい。今回我々は、当院療養型病棟における大腿骨頸部骨折術後患者の転帰について調査したので、その結果を若干の考察を加え報告する。
【対象】大腿骨頸部骨折術後の患者で当院にて理学療法を施行し、平成15年4月から平成16年8月までの間に退院した48例のうち他科合併症にて入院期間が延長となった7例を除く41例を対象とした。内訳は内側骨折16例、外側骨折25例、男性9例、女性32例、術式についてはCHS21例、γ-nail4例、multiplepinning11例、人工骨頭5例、平均年齢79±9.6歳であった。
【方法】当院から直接自宅へ退院した群(以下自宅群)28例と他施設へ入所した群(以下施設群)13例の2群に分けた。そして、1)平均年齢、2)手術日から退院までの期間、3)当院退院時歩行能力、4)痴呆の有無について調査し、2群間の比較・検討を行なった。1)、2)については2群間の比較を対応のないt検定を用いて行い5%未満を有意水準とした。
【結果】1)平均年齢は自宅群77±9.8歳、施設群84±7.5歳で施設群の方が有意に高かった。2)退院までの期間は自宅群93.9±37日、施設群107.0±66日で有意な差は認められなかった。3)最終歩行能力については自宅群においては独歩2例(7%)、杖歩行19例(68%)、歩行器歩行6例(21%)、平行棒内歩行1例(4%)であった。施設群においては独歩1例(8%)、杖歩行3例(23%)、歩行器歩行2例(15%)、平行棒内歩行4例(31%)、車椅子3例(23%)であった。4)痴呆の合併は自宅群では認められなかったが、施設群においては6例(46%)で認められた。
【考察】今回の調査結果では、手術から退院までの期間は両群とも約3ヶ月で、2群間に有意差は認められなかった。このことから術後3ヶ月が大腿骨頸部骨折術後患者の転帰が決定される目安となることが示唆された。施設群は自宅群に比べ年齢も有意に高く、痴呆の合併率も高かったことから歩行能力が低く介助量が多い患者が施設入所し、歩行能力が高く介助量の少ない患者が自宅退院するという傾向にあった。諸家の報告では、退院時の移動能力に影響を及ぼす因子として痴呆や受傷前歩行能力があげられているが、今回の調査から年齢も重要な因子と考えられた。今後は自宅介護力等の他因子との関連についてもさらなる検討が必要であると考える。