理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 940
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骨・関節系理学療法
全人工股関節置換術後の脱臼調査
―13年間での発生状況と原因分析―
*畠 康博矢野 悟
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抄録
【目的】全人工股関節置換術後に留意すべき一般的な合併症は深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症および脱臼などが挙げられる。特に、入院期間短縮に伴う早期離床での脱臼予防は、理学療法を円滑に実施する上でより重要な因子である。今回、当院における過去13年間の脱臼について調査したので報告する。
【対象・方法】1989年から2001年の13年間に全人工股関節置換術を受けた119例(変形性股関節症92例、大腿骨骨頭壊死15例、慢性関節リウマチ9例、急速破壊型股関節症3例)138関節。男性14例 女性105例 51~74歳 平均年齢67歳を対象とした。カルテからは手術に関する情報、脱臼発生状況などを、X線像からはソケットの設置角度を調査した。
【結果】脱臼発生頻度は9例11関節の7.9%であった。入院期間内での発生が多く8例9関節で6.5%、在宅では2例2関節で1.4%、重複者が1例であった。入院期間内での発生状況は、6関節が術後2週間以内であり、術後1ヶ月以降の発生も3関節あった。いずれもベッド上にて手術侵入路側へ脱臼しており、差し込み便器の挿入時や体交時に伸展や外旋を伴う不良肢位などが要因であった。だが、明らかな動作要因を伴わない前方脱臼も4関節あり、軟部組織や注意力の低下も影響していた。在宅では、術後4年以上経過しての発生であり、トイレでのしゃがみ込みや居間での立ち上がり動作での体幹の前屈を含めた、股関節の過屈曲による後方脱臼であった。反復性の4例では、手術手技やソケットの設置角度も大きく影響していた。特に、3回発生の2例では前方開角が-9.6°と40°に大きく変位しており、非常に大きい場合は前方へ、小さい場合は後方へ容易に脱臼していた。
【考察】脱臼は、手術手技や軟部組織の低緊張、そして術後に患者がとる肢位の関連により発生する。当院では前方アプローチが多く、車いす乗車開始頃の身体活動性が増す時期に同調して、股関節を伸展・内転・外旋する肢位で多く発生していた。これらは、術前からの脱臼回避動作練習の不足と術直後の多方面からの情報収集に基づく脱臼管理の不備が原因であったと考えられる。反復性脱臼や術後数ヶ月後の発生要因には、ソケットの設置角度も影響しており、Lewinnekらは前方開角15±10°かつ側方開角40±10°が脱臼しにくい範囲としているが、今回は前方開角に著しい差が見られた。また、立位と臥位で骨盤の矢状面傾斜の大きな変化も脱臼の要因であるように思われた。
【まとめ】入院期間短縮に伴う術後理学療法では脱臼予防は不可欠である。術後理学療法を実施する前に、術者やカルテからの情報収集、手術録やX線像からの人工物の設置角度の確認を十分に行う必要がある。また、看護サイドとの協力による術後脱臼の予防に重点を置いた適切な患者への日常生活動作指導もより重要である。
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© 2005 日本理学療法士協会
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