抄録
【はじめに】
当園では平成13年より個々人に応じた具体的な目標設定を行い、TELER(treatment Evaluation by Le Roux Method)の概念に基づき、記録の工夫および理学療法効果の数値化を試みている。今回、実際の症例に対して2年間TELERを用いて目標設定、効果判定を行い、理学療法効果の数値化と簡素化された記録方法から治療経過の把握が可能になったので報告する。
【対象および方法】
先天性多発性関節拘縮症の4歳男児。平成14年10月より理学療法開始し、2年間で90回の理学療法を実施した。TELERのインジケーターを使用し、達成可能と思われた目標をそれぞれの時期に設定した。その目標のひとつである『歩行器歩行』についてはコースを定め、一定区間における介入の有無を簡単な記号を用いて記録した。これらを基に定期的に効果判定を行った。
【結果】
1.TELERのインジケーターを用いたことで目標達成の経過を数値で示すことが可能になった。2.成功頻度を記号化したことで目標に対する成功割合の数値化が可能となり、その経過をグラフで表現できるようになった。3.目標変更の時期や具体的な目標がないままに理学療法を実施している期間が明確になった。4.保護者への情報開示が容易になった。
【考察】
臨床場面でよく用いられる標準化された評価方法では、こどもの微細な変化が結果として反映されにくい。このことは様々な特徴をもつこどもたちに対する日常の効果判定を同一尺度で行っていくことの限界を示唆している。今回TELERを用いたことで、症例に応じた目標設定と効果判定が可能となった。加えて介入の有無を記号化して経過を追っていったことで成功割合の面からも効果判定が可能となり、これはTELERのインジケーターにおける数値化の裏付けともなった。しかし成功割合が変化していない期間も他の機能面の変化が見られており、今後はこれらの変化を捉えることのできる具体的な評価項目を挙げていく必要があると思われる。同時にこれは客観的な判定が難しいTELERのインジケーターと並行して経過を追うことで、各コードの根拠の裏付けのひとつとなり得るのではないかと考える。また今回TELERの書式を用いたことで長期に渡る記録を簡素化することができた。記録から、目標がないまま理学療法を継続している期間は目標の妥当性の再検討を行っていることが把握できた。こどもがどういう治療経過を辿ってきたかをセラピストが把握することで、家族への情報開示およびその際の説明が容易にできるようになった。特に目標がない期間に関しては今まで家族への説明はほとんど行われていなかった。小児理学療法は長期間に及ぶことがほとんどである。定期的な理学療法経過と目標到達度の提示により、治療に対してこどものみならず家族も目的を持って参加することができればと考える。そのためにも今後は目標設定の際に更に積極的に家族との情報交換の場を持っていきたい。