理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 949
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骨・関節系理学療法
上腕骨解剖頚軸回旋の正常可動域
*長井 大治原田 美由紀塩田 ゆかり柴原 和恵峯 貴文本田 俊介船曳 久由美亀田 淳松井 晃治金田 光浩西川 仁史立花 孝
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抄録

【背景と目的】我々は2004年10月に横浜で第31回日本肩関節学会と同時開催された肩の運動機能研究会にて、パイロットスタディーとして上腕骨解剖頚軸回旋の再現を報告した。解剖頚軸回旋とは、成人の上腕骨の頚体角が135度であることから、臼蓋面に対して直角に面する頂角90度の円錐上を動き、また後捻角が30度であることから、前腕はその円の接線に対して常に30度外旋位を向く運動である。この解剖頚軸回旋では、大結節が烏口肩峰アーチをくぐらない為にストレッチや筋力強化が第二肩関節での痛みを引き起こさず効率よく出来るのではと考えた。そこで前回、拘縮肩で同回旋運動の再現と測定を行い、測定中の疼痛の有無も確認した。加えて従来の関節可動域との相関も調べた。結果、相関係数は概ねr=0.8前後で全体的に相関が強く、従来の関節可動域測定の結果を反映するものと考えられた。また、関節可動域測定中に疼痛を訴えた症例の全例において解剖頚軸回旋での測定中には訴えが無かった。その結果を受けて、今後の臨床での応用の為に正常肩における解剖頚軸回旋の可動域の測定を行うこととした。
【方法】対象は健常成人35名、70肩(男性20名、女性15名。年齢は30.9±6.0歳)である。まず、各運動の関節可動域を従来通りゴニオメーターにより測定(以下、ROM-T)。その後解剖頚軸回旋を再現する為に輪転機を使用した。まず臼蓋面と輪転機の運動面を平行にするため被験者を輪転機に対して30度の角度をつけて座らせた。次に解剖頚軸回旋の便宜上の回旋0度(肩甲上腕関節の肩甲骨面挙上45度、外旋30度)の位置になるように前腕を輪転機に固定。介助者が肩甲骨を固定し、輪転機を回転させ、回旋角度をゴニオメーターにより5度刻みで測定した。
【結果】それぞれトータルアークとしての関節可動域は内外転143.0±12.8度、屈伸228.1±19.1度、1st内外旋127.1±14.2度、2nd内外旋162.1±17.7度、3rd内外旋148.6±17.8度、水平内外転162.4±12.5度であった。そして解剖頚軸回旋可動域は128.6±20.6度であった。また便宜上の0度肢位から外旋(前方)方向へは74.6±13.6度、内旋(後方)方向へは53.6±11.9度であった。
【考察とまとめ】今回正常肩の解剖頚軸回旋の可動域を確認できた事で、今後拘縮肩や不安定肩の評価での指標にすることが可能となった。また拘縮肩において測定中疼痛が出現しなかった事は、第二肩関節での疼痛による防御収縮を引き起こさないことから、肩甲上腕関節での可動域の評価と可動域制限の絞込みに有用であると考える。今後は解剖頚軸回旋を利用した拘縮肩の治療効果や、不安定肩の評価、腱板構成筋の強化への応用等も検討していきたい。

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© 2005 日本理学療法士協会
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