理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 950
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骨・関節系理学療法
横アーチパッドが足部形態に及ぼす影響に関する基礎的研究
*成田 大一尾田 敦藤澤 周平高木 祥
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抄録

【はじめに】横アーチが低下した開張足は外反母趾などの足部障害の原因といわれている。外反母趾に対しては,治療上,横アーチパッドがしばしば用いられるが,パッドの大きさや高さが足部形態に及ぼす影響は明確でない。また開張足の程度をfoot angleによって評価した場合,外反母趾の重症度と関連があるとされているが,横アーチの評価にfoot angleを用いることの妥当性は証明されていないため,その根拠は乏しい。そこで今回,自作の計測器により横アーチ高の計測を試みた。そして横アーチパッドを挿入することにより外反母趾角度やfoot angleがどのように変化するかを検討した。
【対象と方法】対象は,健常女性30名60足である。横アーチパッドは一辺が約3.5cmの三角形型(5mm,10mm厚)に製作し,第2・3中足骨頭近位部に以下の条件で貼り付けた。裸足でピドスコープ上に自然な立位をとってもらい,(1)パッドなし,(2)5mmのパッド挿入,(3)10mmのパッド挿入,での足底接地状況をデジタルカメラにて撮影し,得られたfoot printをもとにPC上でfoot angle,外反母趾角度(前履協式計測法による第一趾側角度)を計測した。またそれぞれの条件にて中足骨頭位での横アーチ高の計測を行った。
【結果】5mmおよび10mmのパッド挿入で足幅が減少した人数はそれぞれ27名(45%),38名(63%)であった。パッド未挿入時の第2趾,第3趾,第4趾の横アーチ高の平均はそれぞれ26±1.8 mm,24±1.6 mm,23±1.4 mmであった。5mmのパッド挿入でそれぞれ平均1.0±0.8 mm,1.0±0.6 mm,1.0±0.9 mmといずれも有意に増加し,10mmのパッド挿入でそれぞれ平均2.0±0.9 mm,2.0±0.9 mm,1.0±1.0 mmといずれも有意に増加した。パッド未挿入時の外反母趾角度の平均は10.7±5.09度で,5mmおよび10mmのパッド挿入との間で有意差はなかった。foot angleはパッド挿入により有意に減少した。
【考察】横アーチパッドの挿入によりfoot angleの減少が認められたが,外反母趾角度に変化はなく,foot angleを横アーチ評価に用いることの妥当性は明確にならなかった。当初は横アーチパッドを挿入することにより前足部の荷重が分散され,外反母趾角度は減少すると思われたが,仮説は証明されなかった。このパッドの挿入により,母指内転筋が圧迫・伸張されるので,すでに母趾種子骨外方偏位や母趾の回旋変形がある場合には,第1中足骨の外反を助長する可能性もあり,外反母趾角度に有意な変化をもたらさなかったと推測される。そのため外反母趾の患者に対しては,横アーチパッドを用いるばかりではなく,外反母趾を矯正できる場所にも適切にパッドを用いることが必要と考える。また通常用いられる横アーチパッドの高さは2~5mm程度であるので,今回の結果からみると足部の骨格構造に与える影響は1mm程度にすぎず,むしろ筋に対する圧迫・伸張により機能向上をもたらしていると考えることができる。

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© 2005 日本理学療法士協会
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