理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 962
会議情報

骨・関節系理学療法
関節弛緩性と筋緊張性から検討した傷害発生の傾向
*袴田 さち子今村 安秀
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】スポーツ選手のメディカルチェックにおける関節弛緩性と筋緊張性のテストは、それぞれ傷害発生との関連が報告されている。しかし両項目の関連と傷害発生の傾向を検討した報告はないことより、これらのテスト結果をもとにその関連性を調査することを目的として本研究を行った。
【対象及び方法】対象は過去7年間に当院でサポートを行った同一サッカーチームの男子選手(年齢12~15歳)167名。関節弛緩性はcarterらの方法に基づいた「東大式全身関節弛緩性テスト」(以下GJL)で点数化し、7点満点中3点以上を「陽性(弛緩)」とした。筋緊張性は1)指床間距離にて「傍脊柱起立筋」2)Straight Leg Risingの角度にて「両ハムストリングス」3)殿踵間距離にて「両大腿四頭筋」4)膝関節伸展位での足関節背屈角度にて「両下腿三頭筋」を計測した。1)-10cm以上2)75度以下3)0cm以上4)20度以下を「陽性:1点(片側のみは0.5点)」として合計を算出した(以下Total tightness score:TTS)。このうち4点満点中3点以上を「緊張」とした。2つの項目より「弛緩/緊張」をA群、「非弛緩/緊張」をB群、「弛緩/非緊張」をC群、「非弛緩/非緊張」をD群として4群に分類し、各群における有傷害者率(有傷害者数/人数)と外傷・障害・傷害発生率(各件数/人数)を算出した。また本研究における「傷害」とは「当院整形外科の受診に至った外傷及び障害」とした。
【結果】GJL・TTSの全体平均点数は2.21/2.18。有傷害者は74名で複数の傷害を有する者も多く、発生件数は外傷85件/障害64件で傷害として149件であった。算出項目をA~D群の順でみると、各群人数(名):9/48/45/65、有傷害者率(%):66.7/43.8/37.8/46.2、外傷発生率(%):100/37.5/60/47.7、障害発生率(%):55.6/31.3/31.1/46.2、傷害発生率(%):155.6/68.8/91.1/93.8であった。
【考察】外傷・障害の何れからもA群が最も傷害発生の危険が高い。同様に「弛緩」を呈しても障害発生率はC群が最も低く、「緊張」が改善できれば障害は減少すると考えられる。しかし外傷発生率においてはC群もB・D群に比べ高値で、「弛緩」を呈する者は外力に弱くなり「非弛緩」より外傷発生率が高いと推察される。「緊張」は問題視されることが多いが、「非弛緩」と共存すればB群のように外傷・障害とも少なく傷害発生率を低下させることができる。逆に「非緊張」でも「非弛緩」であればD群のように障害発生率が高いことがわかる。関節弛緩性は決定因子や加齢による低下を考えると変化は望みにくいが、筋緊張性は変化を生じ易いため傷害予防には「関節弛緩性」を考慮した「筋緊張性」の調整を指導する必要がある。

著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top