抄録
【目的】
大腿骨頚部骨折の機能回復については受傷前レベルへの回復率やその期間が検討されているものの、急性期加療における機能回復を検討したものは少ない。今回の目的は大腿骨頚部骨折(以下FNF)患者の骨折型・手術様式がADLの回復に影響を与えるかを調査・検討し、障害特性を検討することである。
【対象・方法】
2001年8月~2004年9月までに,FNFにより自宅から当院に入院し、理学療法が処方され、入院加療後自宅退院した症例のうち,術後10日と術後1ヶ月の機能的自立度評価表によるADL評価(以下FIM)の追跡調査が可能であった57例を対象とした(内側骨折27例、外側骨折30例、平均年齢80.7歳、男性16例、女性41例)。入院前は歩行自立を条件とし、60歳以下の若年者、転子下骨折は対象から除外した。また、内側骨折は骨折型により手術侵襲に差があるためCannulated Screwによる骨接合8例を除外し、人工骨頭置換術19例(以下人工骨頭群)、Compression Hip Screw(以下CHS群)30例の2群間で比較検討を行った。調査項目は平均年齢、平均在院日数、術後10日FIM、術後1ヶ月FIM、歩行獲得率とした。また、FIMはtotal FIMから平均値を算出し、術後10日・1ヶ月FIMから、FIM gain、FIM efficiencyについても比較検討した。歩行獲得率については歩行自立を歩行獲得例とした。FIMは質問用紙を使用し、術後10日時点は看護師が、術後1ヶ月時点で退院している場合は家族が記入を行った。術後理学療法プログラムは、人工骨頭置換術後はドレーン抜去後、CHS術後は術翌日から痛みに応じて可及的荷重を許可し、荷重制限を行わなかった。また、病棟訓練を原則とし、入院から退院までは365日体制で理学療法を実施した。
【結果】
平均年齢は人工骨頭群78.1歳 CHS群82.3歳、平均在院日数は人工骨頭群28.5日、CHS群32.6日であった。術後10日FIMは人工骨頭群99.3、CHS群91.2、術後1ヶ月FIMは人工骨頭群106.4、CHS群94.8でありいずれも有意差はなかったが人工骨頭群で高い傾向を認めた。FIM gain(術後10日FIM-術後1ヶ月FIM)人工骨頭群7.1、CHS群3.6、FIM efficiency(FIM gain/平均在院日数-10日)は人工骨頭群0.35、CHS群0.15であり有意差はなかったがCHS群にて低い傾向を認めた。歩行獲得率は人工骨頭群89%、CHS群63%であり、人工骨頭群が有意に高かった(p<0.05)。
【考察】
当院では人工骨頭置換術適応の骨折型(Garden3・4)の場合、術前より痛みに応じて患側免荷での起立練習を実施している。人工骨頭群において、術後10日・1ヶ月後のFIMが高い傾向にあったことは比較的若年であることに加え、術前の理学療法プログラムが影響していることが考えられる。また、CHSの適応となる外則骨折は骨膜損傷によって術前・術後の疼痛が強い傾向があり、痛みによる活動制限がFIM gainに影響していると考えられた。