理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 970
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骨・関節系理学療法
腸骨筋収縮により疼痛軽減した症例報告
*仲田 多津子
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抄録
【はじめに】今回、腰部の疼痛により歩行困難であったが、骨盤後傾位での腸骨筋収縮運動を施行することにより疼痛軽減し、独歩自立にて自宅復帰した症例を担当した。この一症例に対する疼痛軽減となったメカニズムについて考察を行ったので報告する。

【症例紹介】79歳女性。主訴は腰部の疼痛。ADLは車椅子レベルで院内自立されており、問題点としては疼痛による歩行困難であった。坐位姿勢を観察すると骨盤前傾位であった。診断名:変形性腰椎症。平成16年10月2日より腰痛増強のため、整形外来受診し、当日入院。10月4日より理学療法開始。10月21日より担当となり、11月6日に自宅退院となった。

【治療経過及び評価】10月21日、疼痛部位は左上後腸骨棘(以下PSISとする)部で安静時痛があり、左股関節伸展時、外旋時、骨盤前傾時の運動時に疼痛増強を認めた。そのことから仙骨面に対する腸骨面の圧力が強くなることで、疼痛が増大するのではないかと考えた。そこで、仙腸関節が離開方向に働くと思われる坐位において骨盤後傾運動を実施することで、疼痛は若干軽減した。10月25日、坐位姿勢として骨盤前傾しているものの、触診では腰椎前弯は減少しており、坐位での体幹前屈時に左PSISは右PSISよりも前方移動が少ないことが認められた。このことから骨盤後傾運動を行う中でも左仙腸関節の動きを促すことが必要だと考え、徒手的に仙骨に対し左腸骨を離開するように促通した。結果、若干疼痛軽減するものの、持続的な効果は少なかった。10月26日、仙腸関節の離開をより簡便に行うために、長さ75cm、幅20cmの伸縮性のあるバンドを骨盤後傾と共に使用することで、安静時痛は消失し、歩行も可能となった。しかし短距離で疼痛出現し歩行困難となった。これは、徒手に比してバンドの方が左仙腸関節を離開する力が働いたと考えられるが、疼痛が出現したことに関しては、歩行によりバンドが緩み、再度関節面への圧力が加わったためだと考えられた。つまり、バンドでは仙腸関節のアライメントを変化させることまでは得られなかった。次にバンドを巻きつつ、骨盤後傾位で腸骨筋の収縮運動を行ったところ、治療後すぐに著明な疼痛軽減が図れた。また症例本人が治療後すぐに効果を実感し、歩行時の疼痛を気にすることなく行えるようになった。これは、左腸骨に対して仙骨が前傾していたと考えられ、腸骨筋の収縮により左腸骨が前傾し、仙腸関節アライメントの変化が得られ、仙骨面に対する腸骨面の圧力が軽減し、疼痛軽減したと考えられた。

【まとめ】本症例は最終的には腸骨筋収縮によって疼痛軽減し、歩行獲得となった。しかし、単一的なアプローチではなく、組み合わせて考えることによって得られた結果ではないか。
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© 2005 日本理学療法士協会
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