抄録
【目的】大腿骨頚部骨折の不安定型(Garden分類3,4)に対する治療方法は,人工骨頭置換術を第一選択とすることが多い.しかし,近年ハンソンピンシステム(以下ハンソンピン)を用いての骨接合術が積極的に試みられるようになり,その短期成績も良好との報告が散見される.ハンソンピンは,低侵襲で術創部痛が少ないとされ,また,不安定型骨折においても強固な固定が得られ,人工骨頭置換術と同様に早期荷重歩行を主体とする早期リハビリテーションプログラムを実施できることが特徴である.そこで今回,当院におけるハンソンピンを用いた骨接合術の現状および術後経過につき調査を行い,人工骨頭置換術と比較検討した.
【対象および方法】2000年5月~2004年5月までにハンソンピンおよび人工骨頭置換術を施行され,当科に依頼のあった者の中から,60歳以上85歳未満で,受傷前に屋内歩行自立以上の能力を有した107例を対象に,治療方法の推移につき年度ごとに調査した.さらにこれらの症例の中から,早期リハビリプログラムを実施し,屋内歩行自立レベル以上の能力を獲得したハンソンピン(Hansson pin system:以下HPS)18例(内訳:男性3例,女性15例,平均年齢70歳),人工骨頭置換術(Hemiarthroplasty:以下HA)76例(内訳:男性14例,女性62例,平均年齢75歳)を抽出し,術後経過につき両群間で比較検討を行った.検討内容は,1.術後リハビリ開始までの日数,2.平行棒内歩行開始までの日数,3.退院時歩行レベルまでの到達日数,4.術後在院日数である.
【結果】ハンソンピン施行件数:2000年(0%),2001年23例中2例(9%),2002年28例中7例(25%),2003年24例中6例(25%),2004年16例中6例(38%)と増加傾向を示した.術後経過に関しては,1.術後リハビリ開始までの日数:HPS群2.1±1.7,HA群3.1±1.7と有意差(p=0.932)を認めなかった.2.平行棒内歩行開始までの日数:HPS群5.1±4.0,HA群7.3±2.9と有意差(p=0.018)を認めた.3.退院時歩行レベルまでの到達日数:HPS群14.9±5.2,HA群17.4±5.4と有意差(p=0.117)を認めなかった.4.術後在院日数:HPS群26±11.5,HA群29.3±8.0と有意差(p=0.183)を認めなかった.
【考察】ハンソンピンの特徴である低侵襲は術創部痛を軽減し, 術後良肢位固定の必要性や脱臼の危険性がないことから,早期離床,ADL向上が容易に可能であった.実際,術翌日からリハビリセンターに車椅子で来室する症例も見られた.また,早期荷重歩行において問題を認めず,人工骨頭置換術と同等の術後経過が可能であったことから入院期間短縮による経済的負担の軽減,早期ADL自立などが期待でき,患者,医療者双方にとって有益な治療法と考えられた.しかし,現在はまだ短期成績の報告が多く,今後,骨頭壊死の問題などを考え,長期追跡調査の継続が必要である.