抄録
【はじめに】不安定板を使用したバランス訓練は、神経運動器の協調を高め、関節を動的に制御するための訓練として用いられている。その訓練効果の報告は様々であるが、自主訓練のみで施行した報告は少ない。そこで今回、健常成人に不安定板を使用したバランス自主訓練を実施し、身体能力への影響を検討した。
【対象と方法】対象は健常成人20名とし、訓練群(男性3名、女性7名、平均年齢28.4±5.1歳)とコントロール群(男性3名、女性7名、平均年齢28.5±6.3歳)にわけた。訓練群は平行棒内で不安定板(OG技研製)の上に立ち、バランス訓練を10分間施行した。バランス訓練は自主訓練とし、自ら8方向への不安定性を作り出して、制動してもらうものとした。訓練期間は週3回8週間施行した。コントロール群は訓練を施行しなかった。評価は以下の4項目を訓練開始前、中(4週間後)、後(8週間後)に測定した。1)バランス能力:重心動揺計(アニマ社製GS-2000)を使用し、閉眼での30秒間閉脚立位時と開・閉眼での20秒間片脚立位時の重心動揺を測定した。2)下肢筋力:Hand-Held Dynamometer(アニマ社製)を使用して股関節外転・膝関節伸展・足関節背屈筋力を測定した。3)関節位置覚:膝関節の位置覚を測定した。被験者は端坐位で閉眼とし、方眼紙上の片足を任意の位置に他動的に置いた。他足を自動的に同角度に移動してもらい、その左右差を測定した。4)反復横飛び:3本線を10往復する時間を測定した。
【結果】訓練前の両群間ではすべての測定値において有意差はなかった。訓練前後の比較では、訓練群において足関節背屈筋力と反復横飛びで有意差がみられた。(それぞれp=0.0051、0.0013)。また、コントロール群においても足関節背屈筋力と反復横飛びで有意差がみられた。(それぞれp=0.0439、0.0172)。その他は有意差が認められなかった。群間比較では、訓練後、すべての測定において有意差はなかった。
【考察】反復横飛び、足関節背屈筋力において訓練群・コントロール群共に訓練開始前後で有意差がみられた。しかし、コントロール群より、訓練群でより大きい有意差を示していることから、不安定板による自主訓練が足関節背屈筋力や反復横飛びの改善に関与した可能性があると推測される。重心動揺については改善がみられなかった。これは、自主訓練内容が動的バランスの要素を多く含むため、静的な条件で測定した重心動揺では結果に反映されなかったのではないかと考えられる。先行研究において、訓練内容や評価方法、それに伴う結果も一貫していない。今後、これらを考慮して、検討していく必要があると思われる。