理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 980
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骨・関節系理学療法
傍脊柱起立筋疲労による反応時間の変化
*黒岩 千晴吉崎 邦夫宇都宮 雅博二瓶 美智子藤原 孝之山本 巌
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キーワード: 筋疲労, 反応時間, 腰痛症
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抄録
【目的】先行研究では骨格筋の一部で筋疲労時反応時間(RT)の遅延が指摘される。また、いわゆる腰痛患者において腰背部脊柱起立筋群に慢性筋疲労状態が存在し、その結果として反応時間の遅延が起こると予測される。従って日常生活動作のなかで姿勢外乱に対する反応が遅れ、予防的姿勢保持が間に合わず、機械的な組織損傷を招来する危険がある。今回はそのうち、直接的に傍脊柱起立筋(ES)に筋疲労を生じさせた結果としてESで測定したRTが変化するかどうかを観察した。
【方法】対象は、説明して書面で合意を得た健常女性5名(平均年齢22歳)。1)ESに筋疲労を起こすために、自重を用いた背筋群トレーニング機器(バックトーソリフター Proxomed社)を使用し、体幹を床面と水平となるように維持する等尺性筋収縮課題を用いた。自重による負荷に加えて肩甲骨背面に体重の10%にあたる重錘を乗せ、姿勢保持不可となった時点で終了とした。腰部右側、L1、L5高位、ESの最大膨隆部においた表面電極より筋活動を記録し、筋電計よりA/D変換後に解析ソフトBimutas IIに取り込み、筋電図周波数中間パワースペクトル(MedPF)と筋電図積分値(i-EMG)の変化を解析した。2)RT測定は立位、体幹20度前傾の肢位にて、両手掌を前方テーブルについた状態を開始肢位とした。動作はランダムに5回、光刺激に対しできるだけ速く上体を引き起こすように指示した。動作の開始は第7頚椎棘突起部に加速度計を付け、確認した。この方法で、最短RTと最長RTを除いた3回を解析対象とし、筋疲労課題実施前と実施直後のRTを比較した。
【結果】筋疲労課題中、L1、L5レベルで得られたMedPFは緩やかに低下し、運動開始直後に得られたMedPFで正規化すると、運動終了直前では平均でそれぞれ62.6%、58.7%まで低下した。i-EMGはゆるやかに上昇し、運動開始直後を100とすると、運動終了直前には平均で、L1レベルが118、L5レベルが131となった。RTは運動前が平均250msec(SD18.7)に対して、運動後は平均223 msec(SD26.5)で優位差は認められなかった(P>0.05)。
【考察】比較的安全な方法で傍脊柱起立筋に疲労を引き起こすことができ、筋電図上で明らかな筋疲労を認めることができた。しかしながら筋疲労後、傍脊柱起立筋による反応時間の遅延は認められなかった。この要因としてはまず機能的に持続的筋収縮による姿勢維持に働く傍脊柱起立筋のような筋群では疲労によるRTの遅延は起こりにくいことが考えられる。先行研究では四肢の運動に伴い、身体重心が移動する場合に体幹筋で観察される動作一連の筋収縮開始が、腰痛患者において遅延することが指摘されている。今後はこのような動作一連の筋収縮において遅延が認められるかどうかをみていきたい。
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© 2005 日本理学療法士協会
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