理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 984
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骨・関節系理学療法
初期変形性膝関節症の内側広筋と角速度について
―遠心性収縮時の活動パターンの検討―
*竹内 薫斉川 大介嵯峨野 淳吉岡 慶
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抄録

【はじめに】変形性膝関節症(OA)患者の症状として、内側広筋(VM)の萎縮や円滑な関節運動の破綻などが出現すると知られており、VMに関しては、求心性や等尺性収縮時の筋活動について多数報告がなされている。しかし歩行や階段昇降など日常生活の中では、遠心性収縮を使うことが多いにもかかわらず、VMの遠心性収縮に関する報告やOA患者の関節運動の円滑さに関する報告は少ない。そこで今回は、初期OA患者の遠心性収縮によるVMの筋活動及び、膝関節運動の円滑さを観察した。また、これらを非OA群と若年者群で比較し、発生する活動パターンの特徴について検討した。
【対象】横浜市大大分類grade0から1、痛みや可動域制限などの測定上障害となる因子をもたない者で最大努力時の筋力が保たれている初期OA群5名(平均年齢65.0±16.3歳)。下肢に愁訴のない非OA群5名(平均年齢62.4±1.4歳)。下肢に愁訴のない若年者群5名(平均年齢24.4±1.4歳)を対象とした。
【方法】被験者はショートパンツを着用し、股関節が90°屈曲位になるように高さ55cmの背もたれのある椅子に座り、足底が床から離れているようにした。課題は膝関節を完全伸展位で保持したまま、音刺激による合図後、メトロノームのリズム(22.5deg/sec)に合わせて膝関節を90°屈曲するように指示した。この課題時のVMを表面筋電図により記録した。また電子角度計を膝関節に取り付け、角度を記録し、微分することで角速度を求めた。この課題を3回施行し、ノイズが一番少ないデータを採用した。
【結果】非OA群と若年者群では、VMの活動が屈曲初期にサイレントになるパターンと屈曲中期にサイレントになるパターンがみられた。初期OA群では、常にVMの活動が持続するパターンと屈曲初期時に一度サイレントになり、屈曲中期から再活動するパターンがみられた。また非OA群と若年者群の角速度は、常に一定のパターンと屈曲後期に上昇するパターンがみられた。初期OA群では、屈曲初期時に上昇し、その後一定になるパターンがみられた。
【考察】今回の研究では、初期OA群の遠心性収縮時は、非OA群や若年者群と比較してVMの活動が出現している特徴が観察された。また初期OA群のVMは遠心性収縮をしているにもかかわらず、屈曲初期時の角速度は上昇しているパターンが観察された。この要因についてはVMだけではなく大腿直筋や外側広筋、拮抗筋の筋活動の影響が関係してくることが推測された。今回の結果だけで断定はできないが、単に筋力増強を行なうだけではなく、各運動や動作において筋出力を調整する能力が大切になることが示唆された。今後は、大腿直筋や外側広筋、拮抗筋の筋活動も測定し、意義のある研究を進めていくと同時にOA患者に対する理学療法の再検討を行っていきたいと考える。

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© 2005 日本理学療法士協会
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