理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1003
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骨・関節系理学療法
上腕骨近位端骨折の保存療法における理学療法効果
*竹下 真大中川 宏島津 哲治吉野 茂迎 和男目良 愛子渡邊 伸彦濱田 賢治
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キーワード: 振り子運動, ROM, ADL
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抄録
【はじめに】当院では、整復不能例、脱臼骨折例以外の上腕骨近位端骨折の保存療法として、石黒らの下垂位での早期運動療法(以下、振り子運動)を実施している。これによりROM、痛み、ADLにおいても良好な治療結果を得ることができたのでここに報告する。
【方法】対象患者は10名、平均年齢は73.7歳であった。骨折時に転位のあるものは、zero positionでの整復後上腕下垂位で三角布とバストバンドで固定し、上腕骨の内反、内旋、外旋を制限する(図1)。対象者は石黒らの適応にもとづき、立位保持可能で、痴呆がなく方法を理解できるものとし、これに加え脊柱に著明な変形がなく腰痛のない患者とした。まず、患者に治療法の具体的な方法、禁忌事項について充分な説明を行い、受傷後1週より屈曲120度を目標に一日2000回程度の振り子運動を2回に分けて行った。当院では振り子運動時の内外旋を制限するために三角巾装着下で平行棒を使用し、平行棒と前腕骨を直角に保持するように目視させ行った(図2)。また、上肢の脱力がうまくできない患者については腹臥位でベッドから上肢を下垂させ脱力した感覚を理解してもらい、そのあと振り子運動を行った(図3)。6週目程度でイメージ下に骨癒合を確認した上で自動介助運動を行い、徐々に自動運動へと移行する。また自動運動が開始されても振り子運動もあわせて行い、夜間は三角布とバストバンドで固定する。なお、固定が内旋位でされるため、この時期より肩関節の外旋のROM訓練も追加する。
【結果】受傷後12週目においてのROM visual analogue scale(以下、VAS)、barthel index(以下、BI)を成績評価として行った。結果は肩自動屈曲100~180度(平均138度)、他動屈曲120~180度(平均148度)、自動外旋10~50度(平均30度)、他動外旋25~60度(平均40度)、VAS平均1.2点 BI平均98.8点であった(表1)。平均年齢が高齢であったが偽関節や骨壊死をおこすこともなく全ての項目について良好な治療結果を得ることができた。
【考察】今まで当院では、上腕骨近位端骨折の保存的療法として従来3~4週固定の後、運動療法を実施してきたが、この時点で軟部組織の癒着による関節拘縮があり、ROM改善、ADLに多くの制限をもたらしていた。2004年4月より、石黒らの振り子運動を実施しADLにおいて実用的なROMを獲得することができた。理由としては早期からの運動によって1.関節内の血液循環が改善され骨兪合が促進された、2.痛みに対する恐怖感が軽減された、3.癒着を予防し、廃用性の関節拘縮が生じない、ためと考えられる。今後、高齢化により上腕骨近位端骨折は大腿骨頚部骨折と並んで増加が懸念される疾患である。しかし、受傷する患者の多くは高齢で何らかの原因によって手術が不可能な場合も多いと考えられる。そのような場合の保存的療法の一手法として本法は非常に有用な方法である。
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© 2005 日本理学療法士協会
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