抄録
【目的】先天性膝蓋骨脱臼は、膝蓋骨が大腿骨膝蓋面より外側に脱臼する稀な疾患である。原因は胎生期の異常、子宮内の異常肢位、遺伝疾患など諸説があるが、明確になっていない。今回は両側に発症した2例の理学療法(以下、PT)について報告する。
【症例1】4歳9ヶ月、女児。1992年6月24日、体重2,646gで出生したが、両側踵足(鉤足)と診断され、当院整形外科で保存的治療を行い、生後1歳8ヶ月で歩行を開始した。この時、膝蓋骨の触知不可、X線での膝蓋骨の確認不可で、「膝蓋骨欠損症」として経過を観察した。1996年2月、両側大腿骨外側顆に膝蓋骨を触知し始めたため、「恒久性膝蓋骨脱臼」と診断名を変更した。1997年3月14日、左膝関節形成術を施行し、6月3日、独歩可能となった。8月1日、右膝関節形成術を施行し、1998年2月には走行可能となり、5月には正座と縄跳びが可能となった。
【症例2】6歳2ヶ月、女児。1997年5月13日、体重3,556gで出生した。1歳で立位、1歳3ヶ月で歩行を開始した。2003年2月頃からgiving way、易転倒が出現した。4月に近医により「両側先天性習慣性膝蓋骨脱臼」と診断された。6月6日、当院で右膝関節形成術を施行し、8月1日、独歩で自宅へ退院した。12月12日、左膝関節形成術を施行し、2月7日に自宅へ退院した。
【術式】症例1は(1)膝蓋骨外側支帯の解放、(2)膝蓋骨内側支帯の整復縫縮、(3)腸脛靭帯の延長、(4)内側広筋の移行を合併した手術で、症例2は(1)外側広筋・大腿直筋外側の切離、(2)膝蓋腱外側1/4縦切開、(3)膝蓋骨内側支帯・内側広筋の移行を合併した手術であった。
【考察】両症例の膝蓋骨脱臼は恒久性と習慣性の違いがあった。症例1は、先天的な足部障害に由来した治療を継続したことにより、脱臼を早期に発見できたが、大腿四頭筋・下腿三頭筋の短縮を免れず、独歩は獲得したものの膝完全伸展に至らなかった。症例2は、習慣性(膝伸展位では膝蓋骨が正常位置)であったため、5歳9ヶ月まで脱臼を発見できなかったが、術後のROMは伸展-屈曲の順で良好に回復した。PTの施行は、両症例ともに頻回な主治医との情報交換、再脱臼の防止、疼痛の回避に注意して進めた。治療種目は(1)から(3)を考案した。(1)運動浴を活用した。患児には運動浴は「水遊び」と捉えられ、格好の導入種目となった。(2)疼痛を回避した股・膝の自動運動によりROMの改善を目指した。母親に対し、PTは能動的なものであるとの認識を啓発した。(3)遊戯的治療種目(ボール蹴り、三輪車駆動など)を導入した。同種目は、幼児期の自発運動性に必要不可欠であり、正常運動発達の支援として実施した。症例1は姉弟で、症例2は疾患が異なったが同年代の入院患児同士で積極的に行った。これらにより、PTに嫌悪感を抱かせず、治療が継続できたものと考えられた。