抄録
【はじめに】
脊柱側彎症において,側彎の進行に伴い胸郭変形による肺組織の圧迫や呼吸筋機能の障害などを生じ,呼吸機能の低下やそれに伴う日常生活の制限が問題となる.当院では側彎症に対する脊椎矯正術が行われる場合,術前より理学療法を行っている.今回,高度の側彎症を有する児童の脊柱矯正術前後の呼吸機能について報告する.
【症例1】
8歳男児(身長114.0cm,体重18.7kg)
診断名:多発性神経線維腫症による側彎症,気管支喘息
現病歴:生後より発達障害があり6歳時の健診で側彎症を指摘された.7歳時より側彎症の進行を認め,身長の低下を来たした.7歳11ヶ月時に脊柱矯正術目的で当院整形外科に入院となった.
理学療法経過:術前画像所見では,X線写真上Cobb角113度の後側彎を認めた.脊髄症状は認められなかったが,呼吸機能検査で肺活量(VC)は0.60L,%VCは48.0%と著明な拘束性障害を認めた.また胸部X 線CT検査では右下葉に無気肺を認めた.術前理学療法は,呼吸訓練器や口すぼめ呼息による呼吸練習と胸郭拡張運動を行った.理学療法開始後7日目より手術までの約7週間はhalo-gravity tractionが施行され, Cobb角は77度に,VCは0.72L,%VCは57.6%と改善した.理学療法開始後約8週で変形矯正術,後方固定術が施行され,Cobb角は61度に矯正された.術後15日目に硬性コルセット装着下でADLは全て自立し,術後20日目の呼吸機能検査ではVCは0.91L,%VCは66.9%となり,術後25日目に自宅退院した.
【症例2】
9歳女児(身長129.5cm,体重21.3kg)
診断名:突発性側彎症
現病歴:4歳頃より側彎を指摘され,6歳時より当院整形外科にて装具療法が開始された.8歳2ヶ月時にCobb角は85度となり, 8歳11ヶ月時に脊柱矯正術目的で当院整形外科に入院となった.
理学療法経過:術前画像所見では,X線写真上Cobb角110度の側彎を認めた.呼吸機能検査でVCは1.07 L,%VCは62.6%であった.また胸部X 線CT検査では右下葉に無気肺を認めた.術前理学療法は,呼吸訓練器よる呼吸練習と全身調整運動を行った.手術の10日前よりコトレル牽引が開始された.理学療法開始後16日目に変形矯正術,後方固定術が施行され,Cobb角は50度に矯正された.術後21日目に自宅退院となり,ADLはすべて自立していた.この時点の呼吸機能検査ではVCは1.16 L,%VCは67.8%であった.また術後3ヶ月時点ではVCは1.32 L,%VCは77.2%であった.
【考察】
牛田は側彎症の程度に関わらず,残存肺機能の有効な活用と肺コンプライアンスの改善を目的とした呼吸理学療法が有効であり,%VCを改善させる効果があると述べており,呼吸機能の改善は理学療法を併行した効果と推察する.
術後の呼吸機能に関して,手術時年齢が16歳未満では術後2年経過時に%VCは約5%の増加を認めたと報告しており,今後呼吸機能の更なる改善が期待できると考えられる.