理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1021
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骨・関節系理学療法
高齢女性の腋窩神経麻痺に対する肩関節運動療法効果の検討
*武富 由雄有澤 修
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抄録
【目的】肩甲上腕関節(GHJ)脱臼から進行した腋窩神経麻痺で三角筋の弛緩性麻痺が起こった高齢女性が麻痺側上肢の挙上困難となった。本症例に対し運動療法を実施、GHJで麻痺肢の挙上が可能、その効果に検討を加え報告する。
【対象と方法】症例は86歳女性、居室で両手に布団を持ったまま前方に倒れ、右GHJ脱臼、徒手整復後デゾー包帯で患側GHJを内転位で固定された。右GHJ脱臼発症6日後、再度転倒し右大腿骨頸部骨折を受傷、外科的固定術を受け、骨折発症後55日で退院した。その間右上肢の挙上困難を訴え、EMG精査した結果、腋窩神経麻痺と診断、2ヵ月間電気治療を受けていたが改善せず転医紹介された。初診時、右GHJの自動前方挙上と外転運動は完全に不可能。右三角筋と棘下筋の筋萎縮は視診上著明。徒手筋力検査結果、右三角筋1,上部僧帽筋2,下部僧帽筋0,前鋸筋1。握力右12kg、左13kg。右肩峰下に圧痛軽度有るが右GHJの可動域は正常域に維持されていた。運動療法プログラムは1.右GHJの他動的可動域運動、2.立位、右関節肘展位でGHJの前方挙上位で右手を壁面に沿って最大に挙上、そして壁面から3秒間手を離す自動運動。3.椅座位、テーブル上に置いた患側肢右肘関節伸展位でのGHJの外転・内転の自動運動、各運動30回、日に2回、在宅でも実施した。
【結果】運動療法開始2ヵ月後、右肘関節屈曲位でGHJ外転90位で3秒間、挙上120-130度位で5秒間各々保持可能となる。この間また転倒し左Colles骨折を発症、保存的に固定されたが右GHJの運動は可能であった。筋力は右三角筋1が3に,上部僧帽筋2が3に,下部僧帽筋0が3に,前鋸筋1が3に増強し、右GHJ外転90位で1分間、前方挙上120-130度位で1分間保持可能となった。
【考察】麻痺側上肢挙上改善に効果を及ぼした要因として、プログラム2.の運動によって肩甲胸郭結合上での右肩甲骨の外転と上方回旋にforce coupleとして作用する上部僧帽筋、下部僧帽筋、前鋸筋の筋力増強が図られ、右側上肢挙上時に麻痺側上肢の重力に耐え得る基盤として肩甲骨の安定性に寄与したと考える。特に右肩甲棘の内側縁に付着する下部僧帽筋の筋力増強によって右上肢最大挙上時右肩甲骨の上方回旋の支点となり、肩甲骨の外転・上方回旋が増し、肩甲骨関節窩の位置が上腕骨頭を把持した状態でプログラム3.の運動によって三角筋の筋収縮を誘発し、上腕挙上維持のための筋力増強に導かれたと考える。連続性は保たれ変性を伴わないneurapraxia末梢神経損傷程度と考えられる高齢者の腋窩神経麻痺に対しては麻痺肢の上部僧帽筋、下部僧帽筋、前鋸筋の筋力増強運動を早期に開始し、肩甲骨の外転・上方回旋の安定性を得ながら、麻痺した三角筋の筋活動を誘発し、以後麻痺側上肢の重力に抗する三角筋の筋力増強によって上肢挙上が可能となることが示唆された。
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© 2005 日本理学療法士協会
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