抄録
【目的】慢性閉塞性肺疾患患者は日常生活活動において上肢を使った動作時に呼吸困難感をより訴える。これは呼吸補助筋が上肢の活動に動員されるため,呼吸運動への参加が減少することがその原因の一つと考えられており,上肢運動時の呼吸困難感改善を目的とした上肢および呼吸筋トレーニングが呼吸リハビリテーションに積極的に取り入れられている。そこで本研究では,支持型・非支持型上肢運動トレーニング,吸気筋トレーニングの中で,運動期間,頻度,運動時間を統一した場合,上肢の運動耐容能や呼吸困難感改善に最も効果のあるトレーニング法を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は健常成人15名(男性7名,女性8名)とし,無作為に非支持型上肢トレーニング群(以下UAE群),支持型上肢トレーニング群(以下SAE群),吸気筋トレーニング群(以下IMT群)の3群に分けた。全ての被験者に対し,吸気筋力測定と上肢運動による漸増運動負荷試験を行った。吸気筋力は最大吸気圧(PImax)を測定し,上肢漸増運動負荷試験は高橋らによって開発された非支持型上肢運動負荷試験(UIULX test)および,上肢エルゴメーターを使用した支持型上肢運動負荷試験(SIULX test)を実施した。そして運動持続時間,運動中の心拍数,上肢の疲労感および呼吸困難感,酸素摂取量を測定した。次に各群に対し運動期間4週間,頻度週3回,運動時間15分のトレーニングを実施させた。運動強度の設定は,UAE群とSAE群はUIULX testおよびSIULX testにおいて無酸素性作業閾値レベル相当する運動強度を設定した。尚,UAE群は指定された負荷量の棒を両手で把持し,膝蓋骨レベルの高さから指定された高さまでの上肢の上下運動を2秒間1サイクルで行う運動を,SAE群は上肢用エルゴメーターを用いて指定された負荷量による運動を行わせた。IMT群は吸気筋トレーニング器具(Threshold)を使用し,PImaxの30%の負荷量にてトレーニングを行わせた。そしてトレーニング前後における各測定項目の変化を統計学的に分析した。
【結果および考察】吸気筋力はIMT群,UAE群において有意に上昇したが,SAE群では有意な変化が認められなかった。UIULX testではUAE群およびSAE群において運動持続時間,最高酸素摂取量が有意に上昇したが,IMT群では有意な変化が認められなかった。また呼吸困難感はUAE群,IMT群で有意に低下したが,SAE群では有意な変化が認められなかった。SIULX testではUAE群,SAE群において有意に運動持続時間が延長したが,IMT群では有意な変化が認められなかった。以上の結果から,非支持型上肢運動トレーニングは同じ様式の運動だけでなく,他の様式による運動時の運動耐容能や呼吸困難感,吸気筋力の改善にも効果が得られ,最も優れたトレーニング法であることが示唆された。