抄録
【緒言】
積雪寒冷地における医療、福祉の現状を考慮すると、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者が在宅にて冬季間継続実施できる運動処方の必要性は高い。そこで、COPD患者が専門家の指導を逐次受けず、自発的、継続的、かつ安全に在宅で実施できる運動プログラムとして、「ながいき呼吸体操」の有用性を多施設無作為対照試験から検討した。なお、「ながいき呼吸体操」とは、呼吸不全者に運動習慣を促すことを目的として当研究室で立案した体操で、ラジオ体操第1のメロディーを6/8拍子で編曲しており、運動強度は約3Metsで運動時間は約10分である。
【対象】
インフォームドコンセントを実施し同意を得られたCOPD患者46名(年齢:72.9±7.7歳、FEV1.0:1.2±0.8L)を2群に割り付け、体操導入群(T群)36名、対照群(C群)10名とした。
【方法】
初回評価実施後、T群に「ながいき呼吸体操」を指導し、体操を記録したビデオを配布し冬季6ヶ月間在宅にて各自体操を実施して頂き、C群には在宅での運動の実施を促した。その後の介入は月1回の病院外来時の運動継続の促しのみとし、半年後に再評価を実施した。評価項目はスパイロメトリー、6分間歩行試験(6MWT)、シャトルウォーキングテスト(SWT)、千住らの評価表によるADL評価、CRQによる健康関連QOL評価である。統計処理にはSPSSを使用し、2群間の比較から有意差を判定した。なお、有意水準はp<0.05に設定した。
【結果】
対象者の入院や研究協力からの辞退等の理由で、T群で36名中20名、C群で10例中7例について半年後評価の実施が可能であった。なお、2群間に有意差は認めなかった。体操実施前後で、両群とも肺機能、ADLに有意な変化を認めなかった。しかし、T群のみに6MWTが321.1±93から351.8±111.7m、SWTが221.5±93.2から246.5±110.3mへと有意な改善を認めた。また、CRQでもT群のみにDyspneaが20.1±6.7から23.0±8.8、Fatigueが17.3±5.3から19.4±5.3、Masteryが19.4±4.7から22.0±4.7へと有意な改善を認めた。なお、T群で8割が週5回以上の頻度で体操を実施していた。
【考察】
今回、運動耐容能の有意な改善を認めた理由として、1日10分程度の体操で運動耐容能の改善を認める可能性は低いが、対照群では改善を認めなかったことから、体操継続による心理的影響、呼吸法の確認による呼吸困難への影響が考えられる。また、ほぼ全員に継続した体操の実施を認めた理由として、メディア導入により運動内容を記憶する必要がなく運動実施が簡便化したことが影響している可能性がある。以上より「ながいき呼吸体操」は在宅COPD患者の冬季在宅運動プログラムとして実用性と一定の有効性を持つと考えられる。