抄録
【はじめに】
近年,疾患の重症化,対象症例の高齢化,さらには入院期間の短縮化により,早期から理学療法を実施する機会が増加している。しかし,急性期病院における呼吸理学療法の実施状況について検討した報告は少なく,その役割についても十分明確にされていない。今回,急性期総合病院において10年間にわたる呼吸理学療法の実態を調査し,特徴と動向を検討するとともに,その役割のあり方について考察を加えたので報告する。
【対象・方法】
1993年4月1日から2003年3月31日までの10年間で呼吸理学療法を実施した入院患者を対象とした。
方法は、当院で使用している呼吸理学療法データベースより各年度別に集計し,経年推移を検討した。調査項目は,年齢,性別,診断名(呼吸器基礎疾患),病態分類,合併症,依頼元診療科,処方および治療内容,入院期間,実施期間,最終転帰である。
【結果および考察】
10年間の呼吸理学療法実施例は4,913例で、93年度の199例から年々増加した。この間,呼吸理学療法専属理学療法士は1.5名から4名へと増員となった。対象者の平均年齢は93年度の69歳から02年度は75歳まで増加し,高齢化が確認された。呼吸器基礎疾患は,COPDと間質性肺疾患の増加をみたが,COPD、肺結核後遺症を中心とした疾患構成の変化は少なかった。病態分類は外科周術期例,急性呼吸不全例が増加し,慢性肺疾患単独例の減少を認めた。併存疾患として脳血管障害,心不全の増加が顕著であり,一定数の精神科疾患の存在は当院の特徴であると思われた。治療内容は周術期管理と排痰・体位管理,早期離床,呼吸管理など,より急性期のプログラムが占める割合が増加し,慢性期症例のアプローチの減少を認めた。実施期間の短縮は入院期間の減少に加えて,目標達成に伴う入院期間中の終了によるものと考えた。
当院における呼吸理学療法の10年間にわたる実施状況を検討した結果,高齢化と疾病構造変化に伴い,対象症例の増加は顕著であり,呼吸器系診療科から一般診療科まで幅広いニーズがあることが明確となった。また,対象者の平均年齢の増加,入院期間の短縮などから,より早期から急性期症例を中心とする診療形態への変遷がみられ,合併症予防と早期離床,ADLの低下予防が呼吸理学療法の役割としてより一層求められていることが示された。
急性期病院における呼吸理学療法の展開はより早期から積極的に介入する必要性があり,各施設は柔軟なシステムの構築と定期的な評価と整備を絶えず行う必要があるものと思われた。