抄録
【はじめに】
近年、比較的発生率が少ないとされていた静脈血栓・塞栓症(VTE)の報告が多くなり、開腹術後の合併症として重要視されるようになってきた。当院リハビリテーション科においても平成14年から、一般外科、産婦人科、泌尿器科の開腹術に対して、1.呼吸理学療法、2.VTE予防理学療法を併用したリハビリテーションをおこない早期離床、早期ADL自立を進め一定の成果が得られたので報告する。
【対象】平成14年4月より平成16年4月までに、一般外科、産婦人科、泌尿器科にて開腹術後にリハ科に依頼のあつた総数131名、男性52名、女性79名、平均年齢59,5±20,9歳を対象とした。
【方法】
診療録と理学療法記録より、1.リハ科に依頼のあつた診療科と疾患の比率、2.リハ施行日数と年齢、診療科との関連、3.終了時歩行自立度、4.呼吸器合併症の発生率、5.VTEの発生率の5項目について検討した。
【結果】
1.今回依頼のあつた科は、一般外科63名、産婦人科52名、泌尿器科16名で48,1%が一般外科あった。また、全診療科における疾患は、悪性腫瘍42,0%、帝王切開18,3%、良性腫瘍13,7%、総胆管結石および胆石症14,5%で、40%以上が胃癌、大腸癌、前立腺癌等の悪性腫瘍であった。2.全科の平均リハ施行日数は、15,3±14,6日で、科別の平均リハ施行日数は、一般外科、21,1±18,1日、泌尿器科、13,9±9,9日、産婦人科、8,6±5,3日で、一般外科が他の科に比べ有意に多かった。全科の平均年齢は、59,5歳で、科別では、一般外科73,6±11.8歳、泌尿器科、69,4±8,3歳、産婦人科、39,4±15,4歳で、産婦人科と一般外科・泌尿器科とのあいだに有意差がみられ、一般外科と泌尿器科との間には差がなかった。また、年齢と訓練期間の関連では、年齢の高い患者ほどリハ施行期間を多く要しており、平均年齢が高くリハ施行日数の多い一般外科でその傾向が強かった。3.術前に歩行不能の患者を除外した平均の歩行機能立獲得率は93,9%であった。4.呼吸器合併症は、全症例中泌尿器科で誤嚥性肺炎が1名のみで、術後より離床および歩行開始時期をとうしてVTEの発生は無かった。他の合併症として、一般外科で腸閉塞、痴呆がそれぞれ1名あった。
【まとめ】
以上のことから、術前の歩行機能獲得率も比較的良好で、VTEの発生が無かったことより手術前後の呼吸理学療法とVTE予防理学療法併用の有効性が認められ一定の成果が得られたことから、早期離床によるADL機能低下の防止を目的とした、より積極的な理学療法の介入が重要と思われた。