抄録
【はじめに】近年呼吸ケアや呼吸リハビリテーション(PR)への関心が高まりつつある中、理学療法士のみならず、病棟勤務の看護師のなかからも積極的に病棟での呼吸ケアにおいて排痰手技等を活用しようという気運は高まっている。しかし、排痰手技などの習得においては経験や感覚によるところが大きく、またガイドライン等がまだ存在しないため実際の病棟での活用においては不明瞭な部分もみられる。そこで今回はPRにおける排痰手技であるスクィージング(SQ)に注目し、他病院を含めたアンケートを実施したので報告する。
【対象および方法】SQに関する独自の質問紙表(設問1~6)を作成し、同県内3病院の病棟看護師にアンケートを実施した。3病院をそれぞれA・B・Cとすると、A:300床の急性期病院の内科病棟、B:200床の地域中核病院の内科病棟、C:100床未満の地域病院の内科病棟であり、PRへの取り組み年数はAが1年弱、Bが5年以上、Cが2~3年であった。アンケートにおいてはA23名、B22名、C30名の計75回答があった。対象看護師全員の平均勤務年数は12.0±10.1(1~30)年であった。
【結果】(1)今までの病棟勤務中にSQを実施たことがある、と答えたのは73名(97.3%)だった。(2)SQを実施する際の一回あたりの時間は、5分以内が30名(40%)、5~10分が42名(56%)、10分以上が3名(4%)であった。(3)SQを実施してみての感想は、程度の差はあれ71名(94.7%)の看護師がSQ実施を難しいと感じていた。(4)従来の排痰手技と比較してSQは痰が出やすい44名(58.7%)、まあまあ17名(22.7%)、変わらない6名(8%)と感じていた。(5)SQを実施する際、何分以上かかると業務上ストレスを感じるかの問いでは、積極的にPRを実施しているB・C病院と比較して、PRを立ち上げたばかりのA病院ではストレスを感じる時間が有意に短かった(B:9.19分C:9.28分A:6.52分、 p<0.05)。
【考察】SQ実施により従来からの排痰手技よりも排痰が促されやすいという好意的な意見も多く見られたが、全体の94.7%の看護師が難しい手技という認識も持っていることがわかった。また積極的にPRを展開している病院としていない病院ではSQへの理解度の差・業務ストレスの感じ方の違いが存在することも明らかになった。PRにおける運動療法に関しては2003年に3学会合同のガイドラインが出版されるなどの動きが見られるが、SQなどの排痰手技や急性期におけるPRガイドラインなどはまだ無いのが現状であり、適応・有効性等に関しては現場間で統一した見解もない。今後リハスタッフ間や他職種へのPR浸透をより進めるためにも他学会や協会などの協力による急性期PR等のガイドラインの作成を望む。