理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 678
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内部障害系理学療法
Lung Volume Reduction Surgeryにおけるリハビリテーションの経験
*濱田 和美入江 将考岩浪 崇嗣中西 良一野村 秀幸
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抄録
【はじめに】肺気腫に対する肺容量減少手術Lung Volume Reduction Surgery(LVRS)では、術前術後の呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)が必須とされている。今回、呼吸リハとLVRSにより、術後早期に改善した症例を経験したので報告する。
【症例紹介】症例は64歳、男性。平成11年より労作時呼吸困難感を自覚、平成16年2月他院にて肺気腫と診断。同年4月5日当院呼吸器外科を紹介され入院。入院時、BMI=18、安静時動脈血液ガスPao276.4Torr,Paco239.4Torr。胸部CT所見と肺血流シンチグラムで、両側上肺野優位のびまん性肺気腫を認めた。MRC息切れ分類はGrade3、Goldの重症度分類はStage3であった。
【呼吸リハプログラム】術前呼吸リハは、トレッドミルを用いた持久力トレーニングを30分間/日行った。運動は低酸素血症予防と負荷強度漸増のため、酸素投与下で施行した。術後呼吸リハは、術翌日よりベッドサイドにて排痰訓練と離床訓練を行い、その後リハビリテーション室にて筋力トレーニングや低強度負荷からの持久力トレーニングを再開した。
【経過】2週間の術前呼吸リハ後、4月21日に胸腔鏡下両側LVRSを施行。術後1病日よりベッドサイド呼吸リハを再開。2病日に両側胸腔ドレーン抜去後、病棟内歩行訓練開始。5病日より持久力トレーニング再開し、術後合併症を起こすことなく、24病日で自宅退院。退院後は、週2回の外来呼吸リハを継続した。
【結果】肺機能は(入院時→術直前→退院時→術後5ヶ月)、FVC:2.26→2.22→3.12→3.62 L、%FVC:68→67→94→110%、FEV1.0:0.75→0.73→1.33→1.37L、%FEV1.0:30→30→43→57%であった。トレッドミルでの漸増運動負荷試験では、最大仕事量:7→10→11.7→11.7METs、運動持続時間:813→1105→1353→1393secで、6分間歩行距離:418→444→501→504mと改善した。MRC息切れスケール(術前→術後):Grade3→2、健康関連QOLも術後改善が認められた。
【考察】胸部手術症例の術後合併症のリスクファクターとして、運動耐容能が最も重要だといわれている。また、術前呼吸リハの期間は6~10週間とされていることが多い。今回、術前呼吸リハにおいて、運動中の酸素投与により速やかな負荷漸増が可能となり、2週間という短期間で運動耐容能の改善が得られ、術前耐術能を向上させることができた。また、術前耐術能の向上と早期離床により、術後合併症を回避でき、術後速やかに持久力トレーニングに移行できた。これらから、術後早期に運動耐容能が改善し、術前術後の呼吸リハとLVRSによって、肺機能と呼吸困難感、QOLの改善を得ることができた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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