抄録
【目的】COPD患者では、疾患の進行とともに栄養障害による体重減少がみられることが指摘されている。しかし、栄養障害と呼吸理学療法との関係についての報告は非常に少なく、COPD患者の栄養状態からみた最適な理学療法に関するコンセンサスは得られていないのが現状である。今回、われわれはCOPD患者の栄養状態をBody Mass Index(BMI)を指標として分類し、栄養障害が呼吸呼吸理学療法の効果に及ぼす影響について検討した。
【対象と方法】対象は当院で呼吸理学療法を施行したCOPD患者61例(男性58例、女性3例)で、年齢は、71.3±7.1歳である。呼吸理学療法前のBMIから、18.5未満を低体重群28例(男性25例、女性3例)、18.5~24.9を標準群25例(男性25例)、25以上を過多群8例(男性8例)に分け、呼吸機能、呼吸筋力(PImax・PEmax)、6分間歩行試験(6MWT)、Chronic Respiratory Disease Questionnaire(CRQ)を呼吸理学療法施行前と施行後3カ月に評価し比較した。また、低体重群においては、経過中にBMIが増加した群(12例)、変化しない群(8例)、減少した群(8例)での検討も行った。施行した呼吸理学療法の内容は、呼吸介助、腹式呼吸と口すぼめ呼吸、呼吸筋ストレッチ体操、呼吸筋トレーニング、上下肢の筋力トレーニング、歩行練習、およびADL指導である。患者にはこれらの内容を2週間に一度の外来受診時に施行し、呼吸介助以外の種目は在宅において継続して実施するよう指導している。また、この他に他職種による呼吸教室を月に1度開催するなど、COPD患者の呼吸リハビリテーションを包括的に実践している。
【結果】BMIの標準群でVC、FVC、RV/TLC、PEmax、6MWT、およびCRQ(Total、Emotion、Mastery)に有意な改善がみられた。低体重群では、BMIが増加した群でVC、FVC、RV/TLC、PImax、6MWT、およびCRQ(Total、Emotion、Mastery)に有意な改善を認めた。過多群で有意な改善を認めたのは、PEmaxとCRQ(Fatigue、Mastery)のみであった。低体重群の検討では、BMIが呼吸理学療法経過中に増加した群では、VC、FVC、RV/TLC、PEmax、6MWT、CRQ(Total、Emotion、Mastery)において有意な改善を認めた。変化しない群で有意な改善を認めたのはCRQのMasteryのみだった。減少した群ではいずれの評価でも改善を認めなかった。
【考察とまとめ】COPD患者の呼吸リハはBMIの標準群で最も効果がみられ、また、低体重群において呼吸理学療法の効果が認められたのは経過中にBMIが増加した群であり、COPD患者の栄養状態は、呼吸理学療法の効果に影響を及ぼすことが示唆された。今後、栄養療法の有用性や呼吸理学療法との併用効果を詳細に検討していく必要があると考えられた。