抄録
【目的】病院間競争を勝ち抜くための周術期のキ-ワ-ドの1つは「医療コストの削減」である。その「医療コストの削減」については早期離床・歩行を推進しながら術後の合併症予防につとめ在院日数の短縮をはかる必要がある。当院ではPatient Controlled Analgesia(患者自己調節鎮痛法:以下PCA)の導入により、外科術後の患者に対して早期離床、運動療法、呼吸理学療法を実施している。今回腹部大動脈瘤切除・再建術施行患者を理学療法実施群と理学療法非実施群(以下:非実施群)との2群にわけ、理学療法の在院日数、術後の合併症発生率、運動耐容能(6分間歩行距離)に対する効果を検討したので報告する。
【方法】平成14年7月から平成16年10月までに腹部大動脈瘤切除・再建術を実施した24例のうち理学療法実施群は10例(男性8名、女性2名、平均年齢76.6±3.0歳)で非実施群は14例(男性13名、女性1名、平均年齢75.1±9.2歳)であった。理学療法実施群は術前に腹式呼吸、排痰指導を行い、術後の早期理学療法として術後1日目に端座位(可能であれば立位)、呼吸理学療法、2日目に立位、歩行練習を実施した。また運動療法室での理学療法が可能となれば退院まで下肢筋力増強トレーニング、歩行練習、自転車エルゴメーターによる全身調整運動を実施した。以上から(1)手術日から端座位、立位までの日数、(2)在院日数、(3)術後の合併症発生率、(4)理学療法実施群における手術前と退院時の運動耐容能の4点を比較検討した。
【結果】(1)手術日から端座位、立位までの日数において理学療法実施群は非実施群より有意に短縮した。(p<0.05)(2)在院日数において、理学療法実施群(18.5±3.5日)は非実施群(24.8±8.2日)より有意に短縮した。(p<0.05)(3)合併症はイレウスが理学療法実施群で0%(0例)、非実施群で21%(3例)、せん妄は理学療法実施群で10%(1例)、非実施群で36%(5例)で両群間に有意な差を認めなかった。呼吸器合併症は両群とも0例であった。(4)術前の運動耐容能(383.4±80.9m)と退院時の運動耐容能(355.0±51.6m)との間に有意な差は認めなかった。(p=0.42)
【考察】今回PCAを使用することで術後4日目までの体動時・咳嗽時の疼痛はVAS値で5以下と良好にコントロールされた。よって早期離床を順調に進めることができ、術後3ないし4日目までに完全離床ができたことが在院日数の短縮につながったと考えられる。合併症において両群間に有意差は認められなかったが、低下傾向にあり今後症例数を増やすことで有意差を認めると思われる。退院時の運動耐容能が術前まで回復したことは、身体機能が十分回復したうえで退院できる可能性を示唆している。腹部大動脈瘤手術後のPCA下における理学療法の実施は在院日数の短縮に有用であった。