抄録
【はじめに】近年、高齢者において、循環障害による下肢切断が増加している。しかし、これらの症例は、身体的・精神的理由により義肢作製非適応となる事が少なくない。今回、精神機能障害を認めたDM性壊疽による大腿切断に対し義肢装着訓練を経験し、Body imageの回復を通して、義足適応について若干の知見を得たので報告する。
【症例紹介】75歳男性(合併症)ASO・左手指1~5指切断・LCS・頚髄症・うつ病(現病歴)H15.12月前医にて両足部壊疽出現し、歩行困難となる。3月同院入院し疼痛controlを行っていたが改善見られず、H16.6.4ope目的にて当院入院となる。
【経過】6.9術前PT開始。HDS-R3点、FIM41点。平行棒内起立中等度介助要し、易疲労、単語による会話は可能。下肢疼痛訴え強く、夜間不穏+。6.16大腿切断術施行(中断端)。術後、創部痛+、幻肢・幻肢痛-、切断肢に無関心。6.22PT programは、DYJOCex、裸足での起立訓練より開始。訓練メニューを確実に遂行・Feedbackできるように一緒に行い、達成感が得られるような配慮をしていたが、しばしば日課を忘れ、訓練を休む事があった。7月頃より、足指の幻肢+、MEDEにて意味・短期記憶疑健常となり、歩きたいという意志が見られるようになったため義足作製(IRCソケット・シリコンライナー・多軸膝継手・単軸足部)。7.23仮義足訓練開始。義足側への荷重感覚がなく、膝継手ロック動作が困難であったため骨盤・股関節の促通、立位保持訓練より行った。握力Rt11.8kg、Lt測定不能、STEF Rt66点、Lt33点であり、義肢装着に時間を要する事で意欲低下につながらないように、装着反復練習を行った。8.17HDS-R25点、FIM86点、車椅子にて院内移動自立。平行棒内歩行介助量軽減しロック動作無しでは転倒するという認識が得られてきた。8.20筋肥大によりソケット不適合となり再作製。義足装着時の写真を部屋に飾るなどBody image回復への工夫を行った。9.1歩行器歩行訓練開始。膝関節・足部の幻肢+。右下肢接地の感覚出現と同時期に、ロック動作への口頭指示必要としなくなり、監視~軽介助にて50m程度歩行可能となった。10.16自宅退院。
【考察】今回、義肢作製非適応とされる症例に対し義肢装着訓練を行い、身体・精神機能が改善した症例を経験した。義肢作製により装着練習における両手動作、右下肢への荷重刺激、ロック動作という転倒危機管理などを通し、車椅子移動自立、幻肢出現、歩行器での歩行といったBody imageの回復に繋がったと考える。通常、訓練意欲や認知機能から患者を評価する事に慣れてしまい、身体を通した援助が主となり、見えない心への配慮が不十分な為義肢作製適応が不明確となっていると考える。今後、さらに具体的な精神機能検査などを交えて高齢切断者に対する義足適応を考えていきたい。