理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1194
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内部障害系理学療法
心不全患者の四肢筋力水準について
*渡辺 敏井澤 和大大宮 一人長田 尚彦鮫島 久紀
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キーワード: 心不全, 筋力, 心機能
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抄録
【目的】運動は禁忌とされていた心不全患者においても,適切な運動療法が運動耐容能改善に効果的であると報告されるようになってきた.また臨床場面でも心不全患者に筋力強化運動を実施し,運動耐容能が改善する症例を多く経験する.しかし心不全患者の四肢筋力水準について横断的に検討した報告は少ない.本研究の目的は外来通院中の心不全患者の四肢筋力を測定し,その筋力水準と心機能との関連を検討することである.
【対象】外来通院中の心不全患者の運動負荷試験時に,検査の説明同意を得て四肢筋力測定が実施できた95例を対象とした.対象の内訳は男性83例女性12例,平均年齢57.4±13.1歳,平均身長165.5±6.7cm,平均体重63.9±13.2kgであった.
【方法】上肢筋力はJAMARハンドダイナモメーターにて, 両手各々を肘90度屈曲位で3回測定し最大値を握力とした.下肢筋力はBIODEX社製SYSTEM2にて,両下肢各々の膝伸展ピークトルク体重比を測定し最大値を脚力とした.心機能は最高酸素摂取量体重比やBNP(brain natriuretic peptide)などを,カルテより後方視的に調査した.分析はSpearmanの相関係数を利用し5%を有意水準とした.
【結果】握力の平均値は30歳代45±7.3kg,40歳代42±9.1kg,50歳代40±9.1kg, 60歳代35±7.5kg,70歳以上31±8.8kgであった.脚力の平均値は30歳代2.5±0.3 Nm/kg,40歳代1.9±0.4 Nm/kg,50歳代1.9±0.4 Nm/kg,60歳代1.7±0.4 Nm/kg,70歳以上1.5±0.5Nm/kgであった.握力と脚力は年齢と有意に相関(r=-0.463,-0.522)していた.脚力と最高酸素摂取量体重比の相関は30歳代でr=0.717と有意であったが40歳代と50歳代は相関なし,60歳代と70歳以上はr=0.493,r=0.460で有意であった.BNPは年齢別の四肢筋力と最高酸素摂取量体重比に相関を認めなかった.
【考察】外来通院中の心不全患者の四肢筋力水準は,井澤(2003)の報告した心筋梗塞発症後6か月の男性平均値を全ての年齢層で下回っていた.従って心不全は四肢筋力低下の生じる疾患群であると考えられた.また脚力と最高酸素摂取量体重比の相関は60歳以上で有意となり,高齢心不全患者の運動耐容能には脚力が重要な因子になることが確認された.以上のことから外来通院中の心不全患者の運動療法においても,筋力強化の方法論を確立し積極的に導入する必要性があると考えられた.
【まとめ】外来通院中の心不全患者の四肢筋力は心筋梗塞発症後6か月の症例の平均値を下回っていた.特に60歳以上では運動耐容能を規定する重要な因子になると考えられた.
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© 2005 日本理学療法士協会
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