抄録
【目的】現在,本邦における心臓リハビリテーション(心リハ)の保険適応期間は6か月であるが,心リハ終了後においても身体機能を維持・向上することは,二次予防や健康関連QOLそして生命予後の観点から極めて重要である.本研究の目的は,心筋梗塞(MI)患者を対象とし,心リハ後の歩行運動に下肢筋力トレーニング(筋トレ)を併用した自主トレが身体機能指標に及ぼす影響について検討することである.
【方法】1.対 象
S病院にMIで入院後,リハ部に依頼があった連続53例中,回復期心リハを終了し,かつ発症後1,6か月時点において心肺運動負荷試験(CPX)と下肢の筋力測定を施行した37例を対象とした.37例中同意が得られた24例について発症後6か月(T1)時点でのCPX終了後,歩行運動に加え下肢筋トレを施行したK群(n=12)と歩行運動のみ施行したH群(n=12)の2群に無作為に選別し,心リハ終了後6か月以上経過した時点(T2)でCPXと下肢の筋力測定を再度施行した.
2.患者背景に関する情報
患者の病態および背景は,診療記録より調査した.その内容は年齢,性別,梗塞部位である.
3.運動継続の有無
運動継続の有無は,Transtheoretical modelに基づく運動継続の基準にて調査した.
4.身体機能指標
身体機能指標として,最高酸素摂取量(PeakVO2)はCPXにて,膝伸展筋力値はBIODEX社製SYSTEM2にて,膝伸展peak torque(KPT)値を体重で除した値を求めた.
5.自主トレ
H群は歩行運動のみを, K群は歩行運動に加え,calf-raise, squatteを各5回×2から4set,週2から3回の頻度で施行した.
6.分析
分析にはχ二乗検定,U検定,二元配置の分散分析を用いた.統計学的判定の基準は5%とした.
【結果】1.最終対象者は24例中,K群10例(平均年齢65.2歳,男性90%), H群8例(平均年齢66.8歳,男性87.5%)の18例であった.
2.患者背景には, 2群間で差を認めなかった.
3.運動継続率は,18例中18例の100%であった.
4.K群はH群に比しPeakVO2はT1からT2にかけて高い傾向にあるが有意差は認めなかった(30.2±7.8vs.27.4±6.6→30.8±6.6 vs.25.9±5.9ml/min/kg,F(1,16)=3.46, p=0.08).KPT値は,K群はH群に比しT1からT2にかけ向上した(1.87±0.37 vs.1.90±0.28→2.05±0.39 vs.1.68±0.29 Nm/kg, F(1,16)=20.6, p=0.00).
【考察】
患者背景には2群間で差がないことから,これらが身体機能指標に与える影響は少ないものと思われた.K群はH群に比し,PeakVO2はT1からT2にかけ差を認めなかったが,KPT値は高値を示した.歩行運動は両群ともに継続していた事から,K群での筋トレが心リハ後においてKPT値の維持・向上に寄与したと思われる.下肢筋力は日常生活動作に関連するのみならず,心疾患患者の生命予後規定因子の一つとされている.従って心リハ後においても歩行運動に併用し,筋トレを積極的に取り入れることが必要と考えられた.
【まとめ】
心リハ後の自主トレは, 身体機能指標のうち特にKPT値の維持・向上に寄与する可能性がある.