抄録
【はじめに】痴呆性高齢者は、軽度を含むと要介護高齢者の半数、老健施設をはじめ施設入所者の80%を越えるといわれている。Alzheimer病(以下AD)患者の死因には、自律神経障害が関与していると考えられており、リハビリテーション実施上自律神経症状に注意が必要と思われる。しかし、その評価法としての、血清中のDBH測定やAchE活性等は一般的でなく侵襲がある。そこで今回、非侵襲である交感神経皮膚反応sympathetic skin response(以下SSR)を用い、改訂長谷川式簡易知能スケール(以下HDS-R)得点、他の自律神経症状として便秘の有無、浮腫の有無との関連について検討した。
【対象と方法】対象は当施設入所中のAD患者31名で、最重度群HDS-R0点、男性1名女性6名の計7名平均年齢81.43歳。重度群HDS-R10点以下、男性3名女性9名計12名平均年齢85.58歳(内便秘・浮腫有り4名、便秘のみ有り6名)。中等度群HDS-R10点以上、男性1名女性11名計12名平均年齢85.33歳(内便秘のみ有り5名)と、control群(健常成人)男性4名女性7名計11名平均年齢44.73歳である。SSR測定は、筋電計を使用し、右手根部正中神経刺激を加え両手掌より、1回毎の反応を記録し計4回記録した。得られた波形について潜時と振幅を計測し、最短潜時、平均潜時、最大振幅、平均振幅を求め、左右差、左右比を痴呆各群、control群と併せて便秘・浮腫の有無でも検討を行った。
【結果】最重度群7名全員誘発不能であった。潜時はHDS-R得点が低い程延長していた。最短潜時、平均潜時共に左右差において、中等度群に比べ重度群が有意に差があった。振幅では中等度群と重度群で有意差は認められなかったが、平均振幅左右比において、便秘有り群が、なしに比べ有意に低かった。control群とは、痴呆群が振幅において有意に低下し、潜時では延長しさらに潜時左右差大きかった。
【考察】ADでは突然死が多く、自律神経障害の関与がいわれているが、その評価方法は確立されていない。今回の検討で、痴呆の重症度に伴いSSRの潜時延長しており、これは自律神経障害を反映していると考えられた。中等度群より、重度群でSSRの潜時左右差が顕著なっており、ADでの自律神経障害の進行で左右の不均衡が存在することが考えられた。SSRの異常は、起立性低血圧、心電図異常と関連していると報告もあり、ADのリハビリテーションを行う上で自律神経症状に注意が必要である。SSRは非侵襲で簡便であることより、この計測は自律神経障害合併予測に有用であると思われた。