理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1217
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内部障害系理学療法
原発性肺高血圧の心肺リハビリテーションにおける運動耐容能の変化
―プロスタサイクリン持続静注療法下において―
*内 昌之大国 生幸原田 孝中山 智孝佐地 勉
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抄録
【目的】
原発性肺高血圧症(Primary Pulmonary Hypertension: PPH)は疫学的には約100万人に1人とまれな疾患で診断後の生存期間は5年以内と予後が悪く、進行したPPH症例に対する運動負荷は心不全を悪化させるため禁忌であった。強い心不全を合併したPPH症例でプロスタサイクリン(prostacyclin: PGI2)持続静注療法の開始後早期より心肺リハビリテーション(Cardio Pulmonary Rehabilitation: CPR)を実施し、その有用性を検討した。
【対象】
対象は1999年1月から2003年9月までにPGI2持続静注療法を開始したPPH患者24症例(男性11名、女性13名)、年齢は5才から37才、入院時New York Heart Association(NYHA)分類はIII度15例IV度9例であった。対照群を健常者13名(男性5名、女性8名)年齢4から35才とした。
【方法】
PGI2持静注療法開始後、American college of sports medicineによる心疾患患者に対する運動処方ならびに米国University of Southern California University Hospital, Heart and Lung Transplant protocolを基に上肢筋のトレーニング・歩行訓練・自転車エルゴメーター・トレッドミルを用いた30から60分間、週5日間の段階的なCPRを施行した。統計処理にはSPSS for windows (Version 8.01J SPSS Japan Co.)を用いすべて両側検定とし、P値が0.05未満を統計学的に有意とみなした。
【結果】
 CPR後にSpO2の有意な変化を認めず、安静時心拍数は低下し(p=0.007)、NYHA(p=0.010)、下肢筋力(p<0.001)、実用歩行能力(p<0.001)、ADL(p<0.001)の改善を認めた。6分間歩行距離は主たる制限因子を疲労感と心拍数の上昇とし対照群に対し低値であったが、いずれもCPR後に延長を認めた(p=0.001)。
【考察】
PPHは進行に伴い心室中隔が左室へ突出し左室は三日月状に偏平化し、右室圧・右房圧上昇と、左房圧低下・左心系循環血流低下の両心不全状態を呈し、心拍出量の低下をきたす。PGI2の持続静注による肺血管抵抗の減少が心拍出量増加と換気改善をもたらし、末梢器官である骨格筋組織の血流が増加し、運動耐容能の改善が得られたと考えられた。
【結論】
 PGI2持続静注療法下では、十分な管理下であれば従来禁忌とされていたNYHA IIIからIV度のPPH症例に対し心機能の悪化を惹起せずCPRの実施が可能で、下肢筋力、実用歩行能力、ADL、運動耐容能の改善に有用と考えられた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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