抄録
【はじめに】近年,介護保険の法整備などにより要介護者が安心して地域生活を送る環境が整いつつあるが,医療機関と地域サービス提供者との連携が不十分であり,在宅サービスが効果的に行われていないのが現状である.福井県嶺南圏域広域支援センター(以下,当センター)である当院においても関係職種との連携が不十分であり,地域サービス提供者への有効な情報提供が出来ていない状態であった.そのような状況を打開すべく,当センターでは,地域リハビリテーション支援体制整備推進事業の一環として,より効果的な自立支援サービスの提供を目的に,関係職種との連携を図り,退院時の患者情報を医療機関から地域サービス提供者へ提示するシステムの構築を目指した.このシステムを確立するために当センターでは,地域生活に必要と考えられる情報を記載した退院時診療情報提供書(以下,提供書)を作成し,それを通じて関係職種との連携を図ってきた.
【提供書内容】提供書は,必要と判断した患者様又はその御家族に提供書の主旨を説明し,希望するか確認後,生活活動能力(出来るADLとしているADL)やリハビリ情報等の全6項目を記載する.そして介護支援専門員をはじめとした地域サービス提供者に渡し,地域生活へと繋げていくものである.
【事業展開における問題と現在までの状況】現在に至るまでシステムを構築していく上での様々な問題に対応してきた.1,より有効な書式にするため提供書書式内容の変更,2,看護部との連携方法,3,リハビリ職員に対する促し,4,円滑で確実な情報提供をするために診療情報提供料の算定開始.そのための事務部との連携方法,5,地域サービス提供者への事業周知やアンケート調査を実施してきた.結果,他職種の情報提供に対する意識向上や連携促進により,提供件数が大幅に増加し,診療情報提供料も円滑に算定出来ている.さらに地域サービス提供者の当センターへの訪問回数や提供依頼数が増加しており,アンケート調査の結果から提供書の周知,その有効性についても理解が得られている傾向にあった.しかし,より有効な情報提供を実現するためには,医療機関内での関係職種との密な連携がさらに必要であると考える.特に介護支援専門員からの意見として,看護情報が不十分であり,地域が必要としている看護情報とは,より詳細で専門的な情報であることがわかった.この問題を解決すべく,提供書に看護サマリーを同封すること等,医療機関内での連携について対策を検討し,実施した.
本学会にて具体的な対応策,関係職種からの反応,今後の課題を加え報告する.