日本栄養士会雑誌
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褥瘡を有する透析患者にアルギニンを使用した1 症例
北林 紘高橋 睦美
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2013 年 56 巻 3 号 p. 199-206

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抄録
女性透析患者1 名に褥瘡治癒のためアルギニン(Arg)強化療法を施行したので、その経過を報告する。症例は仙骨部褥瘡の肉芽形成が不良であったため、Arg を強化した製品を投与した。初めに、Arg、グルタミン(Gln)強化製品であるアバンド TM を投与したところ、肉芽形成は促進された。しかし、尿素窒素(BUN)が111~135 mg/dL と著しい上昇が認められた。次に、Arg のみが強化されているアイソカル ®プラスEX に変更したところ、BUN は67 mg/dL に低下した。その結果から、BUN の上昇にはGln が関与している可能性が示唆された。その後、褥瘡は治癒したが、エネルギー不足とArg・Gln 強化による尿素産生亢進の影響と考えられる体重減少、アルブミン値低下が生じた。また、アイソカル ®プラスEX の投与時に高リン血症6 . 8 mg/dL が認められたことから、透析患者にArg を投与する場合には、十分なエネルギーと電解質含有量に注意して経腸栄養剤を選択し、投与後の体重および血液パラメータのモニタリングが重要である。
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