抄録
【はじめに】
介護予防事業が全国で展開されているが、地域特性を反映した独自のシステムが必要となる。高知県では香北町の先駆的取り組みにより老人医療費の抑制という成果が報告されている。この成果を全県的に拡大するため、モデル事業として15年度に香我美町(人口6,460人、高齢化率26.5%)ほか3町村での高齢者健診が実施された。そして健診による虚弱高齢者の把握と、運動教室等の開催、健康意識の向上に努めている。健診および運動教室には本校理学療法学科の教員および学生が協力しており、取り組みを報告する。
【健診システムの実際】
町の有する住民既存情報と後期高齢者872人のアンケートをもとに虚弱傾向の者を抽出し、健診への参加を呼びかけた。健診は延べ3日間行われ、スタッフは保健師、看護師、理学療法士、学生など約20名、受診者は79名(男34、女45)であった。健診項目は身長、体重、血圧のほか、運動機能として1)Functional Reach、2)握力、3)Finger Tapping、4)Up & Go、5)棒反応、精神機能としてMMSEを実施した。そして結果を5段階(優れる―年齢相応<3段階>―低下)に評価し、24名に機能低下が疑われた。
【運動教室】
15年度は健診で機能低下を認めた者を対象に運動教室への参加を呼びかけ、うち8名の参加があり週2回3ヶ月間の教室を実施した。指導内容はストレッチングを中心に筋力トレーニングを加味した約1時間の運動である。参加による機能的変化を確認するため、1)握力、2)長坐体前屈、3)開眼片脚立ち時間、4)Up & Go、5)10m歩行時間の5項目を検討した結果、10m歩行で有意な向上を認めた。そして16年度は町内3ヶ所に運動教室を拡大し(週2回3ヶ月)、予防的な意味合いから高齢者全般に門戸を開き実施している。3ヶ所は地域性だけを考慮したのではなく、運動課題の水準や送迎の必要性などが加味されたもので、集団の機能的水準がある程度均一化されている。よって指導内容も集団により若干異なっている。運動教室は現在開催中のものもあるが、終了したY地区(参加者数21名)では3ヶ月間の教室を通して長坐体前屈の向上を認めたが筋力面での変化は認めなかった。比較的健康な参加者集団であり、筋力面での向上を期待するには負荷量の再検討が必要である。なお、この教室は3ヶ月間の教室終了後も自主運営で継続している。
【考察】
介護予防を目的とする事業が全国で展開されているが、財政問題やマンパワー不足、介護保険との関係など多くの課題が予測される。地域にある人材を活用し、より効率的な事業展開を行うには個々の自治体の実情に沿ったシステム作りが重要であり、究極的には高齢者の健康意識の高まりをもたらすものでなくてはならない。多くの実践結果を共有することで、よりよいシステムモデルが構築されると思われる。