抄録
【はじめに】第3回全国訪問リハビリテーション研究大会にて、北海道内における訪問看護ステーション(以下ステーション)からの理学療法士・作業療法士(以下PT・OT)による訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の提供状況について報告した。その中で、道内における訪問リハ提供の実態報告に加え、PT・OTのマンパワー不足や連携強化の必要性が確認された。そこで今回は、ステーションの所在する地域別にみて、訪問リハの提供状況やマンパワーの実態などの差異を検証したので報告する。
【対象及び方法】平成16年7月現在で道内に開設されている全239ステーションの管理者に対し、同年8月に郵送調査法によるアンケート調査を実施した。このうち168ステーションから有効な回答があり、その所在地域別に「札幌市」「その他の市」「町村」に分類して集計した(有効回答率は各73.2%、70.4%、66.0%)。調査項目は、1.PT・OTによる訪問リハ提供の有無、2.PT・OTのスタッフ構成、3.マンパワーの充足度、4.訪問リハの導入予定、5.導入に至らない理由、とした。差の検定にはt検定とχ2乗検定を用い、危険率5%未満を有意水準とした。
【結果及び考察】PT・OTによる訪問リハの提供があるステーションの比率は、「札幌市」「その他の市」「町村」の順(以下同順)で67.3%、39.5%、20.0%と都市部でより高く、いずれの間にも有意な差を認めた。PT・OTの常勤換算数の地域別平均は0.9±1.3名、0.4±0.9名、0.1±0.4名であり、札幌市及びその他の市と町村の間で有意な差を認めた。ただし、訪問リハ提供のあるステーションにおいて算出した常勤換算数は1.4±1.4名、1.3±1.1名、0.7±0.8名で有意な差を認めなかった。また、常勤スタッフを有する比率に関しても28.6%、50.0%、14.3%で有意な差を認めなかった。マンパワーの充足感に関しても、有意な差を認めず約6割が不充分と答えていた。これらより、地域単位でみた常勤換算数には差があるが、訪問リハを提供しているステーションに限ってみると、その提供規模には地域差はなかった。一方、地域単位でみた要介護・要支援認定者数に対するPT・OTの常勤換算数の割合は、地方ほど低い値を示した。以上のことより、提供側のマンパワーに対する充足感には地域差はなかったが、サービス受給機会の地域差は存在するものと考えられる。
【結語】地域ニーズと社会資源を考慮した上で、その地域に適したリハビリテーションサービスを再検討する必要がある。同時に、訪問リハの専門性確立とその啓発を通し、地方のニーズにも応えられるよう活動していく必要性も示唆された。