理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 771
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生活環境支援系理学療法
在宅ケアをコーディネートする理学療法士(PT)の役割
―浴室周囲の改修を通して―
*中野 善之備酒 伸彦
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抄録
【はじめに】今回、家屋状況から在宅での入浴が困難であったケースに対して、PT、ケアマネージャー、工務店の各専門職種との連携によって在宅での入浴が実現した。このケースからPTの 1)本人の自己決定を支援する役割 2)その決定を実現するために他職種をコーディネートする役割について考察する。
【事例紹介】68歳男性、実母と妻、息子2人の5人暮らし。診断名は左視床出血。平成15年12月に発症して入院。回復期病棟でADL指導を受け、平成16年6月に退院。現在、介護度は2である。
【身体評価】Brunnstrom Stage右上下肢、手指とも2であり、右上下肢の表在感覚、深部感覚は左に比べて1/10であった。非麻痺側筋力は上下肢とも5レベルで、握力も十分な強さであった。
【基本動作・ADL】 起居動作自立。座位バランスは良好である。椅子、床からの立ち上がりは、支持物があれば可能。歩行は4点杖と短下肢装具を使って自立しているが右下肢の支持性が乏しく、その場での方向転換が難しい。また、段差を越える際にバランスを崩すことが見られた。更衣、入浴を除きADLは自立。入浴はデイサービスを利用していた。朝晩の散歩を日課としており、活動性は高い。
【家屋環境】和式建築である。トイレ、食堂への動線に段差はないが、風呂は土間を越えて行く必要がある。土間から床面の段差は風呂側400mm、居間側590mm。また、浴室は入り口に120mmの段差があり、浴槽は蹴上げ300mm、深さ590mmであった。
【提案・経過】段差が大きいため入浴はデイサービスを利用していたが、本人のニードは在宅での入浴であった。これを解決するため、実際に福祉用具を持参して訪問し、手すりの位置、シャワーキャリーの使い方、動作の方法などを細かく確認した。その結果、改修の具体的なイメージができ、改修方法を本人が決定することができた。また、この決定を実現するために工務店、ケアマネージャーに身体状況や動作方法、改修案を具体的に伝え、施工方法については工務店に任せた。その後、工務店、ケアマネージャーに施工状況を適宜確認しながら改修を進め、新たに浮上した問題点についてはケアマネージャーを通じて再度訪問を組み、解決した。
【結果・考察】スムーズに改修は進み、在宅で入浴が可能となった。PTの役割ついて次の2点から考察を加える。1)本人の意思決定を支援する役割:本人の自己決定がない住宅改修は提供者側の一方的な押しつけになりうる。自己決定を支援ことはPTにとって大切な役割と考える。2)その決定を実現するために他職種をコーディネートする役割:他職種と情報を共有し、連携を密にすることは不測の事が起こった時にもスムーズに対応ができ、より効果的な改修が実現可能である。これからも利用者の求めに応じてよりよいサービスが提供できるよう、これらの努力を重ねていきたい。
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© 2005 日本理学療法士協会
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