理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 770
会議情報

生活環境支援系理学療法
高齢者の介護予防事業に関わっての一考察
*高柳 公司平野 真貴子野口 浩孝大石 賢大場 潤一内田 由美子山崎 裕司大城 昌平中野 裕之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】
 われわれは、介護予防を目的に、高齢者運動機能測定および運動指導を行っている。今回、2~3ヶ月間の運動指導前後で運動機能測定後を実施し、その効果について検討したので報告する。
【対象・方法】
 対象は、長崎県M町(人口約34,000人)にて2度の運動機能測定に参加した、137名、平均年齢76.6±5.9歳(男性17名、75.8歳、女性120名、76.7歳)であった。
 測定項目は、年齢、性別、身長、体重、下肢筋力、背筋力、握力、10m歩行速度とした。下肢筋力は,左右の等尺性膝関節伸展筋力をアニマ社製徒手筋力計(μTas MT-1)を用いて2回測定し、その平均値を使用した。
 アンケート調査は、2度目の測定時に、質問紙法にておこなった。質問内容は、1)今回と前回の測定はいかがでしたか、2)測定は運動のきっかけになりましたか、3)指導した運動は行ないましたか、4)体調に変化はありましたか、5)今後も運動機能の測定を受けたいですか、の5項目で、それぞれ3つもしくは2つの選択肢より回答を得た。
 運動指導は、1度目の測定後に、結果報告書と運動内容のパンフレットを配布し、以下の集団実技指導を実施した。1)立位にて下肢の内外転、屈曲伸展、スクワット、両つま先立ち。2)端坐位にて、膝の伸展、股関節屈曲、体幹の伸展。3)臥位にて、ブリッジ、頚部の屈曲。4)四つ這にて、股関節の伸展。5)散歩。それぞれの運動回数は10回程度とし、無理のない程度で個人の判断とした。散歩についても、距離等について具体的な指示はせずに、体調に合わせて行うように指導した。チェック表にこれらの運動の実施状況と万歩計の歩数を毎日記入してもらった。
 解析には、χ二乗検定およびt検定を用いた。
【結果・考察】
 運動機能測定が、運動のきっかけとなったと回答した者は86名(64.2%)であり、指導した運動を実施したと回答した者は63名(46.7%)であった。運動を実施したと回答した63名のうち52名(81.3%)は、運動機能測定が運動実施のきっかけとなったと回答しており(P<0.01)、運動機能測定が運動実施に好影響を与えたことが示唆された。
 両下肢筋力の平均は、運動を実施した群では18.2±7.5kgから20.3±7.3kgへ、少しした群では16.5±5.7kgから19.3±8.0kgへ有意に増加し(P<0.01)し、運動による下肢筋力向上がみられた。一方、しなかった群では15.9±6.6kgから15.0±5.5kgと有意な変化は無かった。
 体調がよくなったと回答した者41名(30.8%)では、運動を継続したと回答した割合が高かく(P<0.01)、運動継続による身体調整health conditionにも効果がみられた。また、今後も運動機能測定を受けたいと答えた者が112名84.2%で、運動機能評価や運動指導に対するニーズが高いようであった。
 今後は運動指導だけでなく、運動に対する指示従事行動を如何に維持するかという視点から検討を深める必要がある。
著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top