理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 792
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生活環境支援系理学療法
異なる蹴上げ高が拇趾踏面間距離に与える影響について
*相馬 正之吉村 茂和宮崎 純弥寺沢 泉
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抄録
【目的】階段昇降は、日常生活でよく用いられる動作の一つであり、階段の蹴上げ、踏面などを判断して遂行されると考えられる。また階段では、転倒の報告が多く、階段昇段時における転倒原因の一つとして拇趾が蹴上げと踏面とにつまずくことが予想される。今回我々は、5cm、10cmおよび15cmにおける階段昇段時の拇趾-床間距離(階段を昇る際に階段の蹴上げと踏面とのなす角からの垂線上を拇趾が通過した際の拇趾と踏面の距離)を比較検討したので報告する。
【方法】対象は若年者10名(平均26歳)とした。測定器具は三次元動作解析を用いた。使用した階段は、踏面25cm、巾70cmの3段の階段、蹴上げ高がそれぞれ5cm、10cmおよび15cmの三種類とした。拇趾-踏面間距離の測定するため、赤外線発光ダイオード(以下、LED)は、階段の各蹴上げと踏面との角の3個所、両側拇趾背側皮膚上の2箇所、合計5箇所に貼付した。両側拇趾背側皮膚上のLEDは、拇趾先端と拇趾足底部がLEDを中心とする半径Rの円と仮定するため、安静立位にてLEDから床までの垂直距離とLEDから拇趾先端までの距離が等しくなるように貼付した。拇趾-踏面間距離の算出方法は、各蹴上げと踏面とのなす角の垂線上をLEDが通過時の値から階段の各踏面の高さおよび安静時立位時のLEDから拇趾足底部までの距離を差し引いた値とした。階段昇段時の条件は歩行開始から2歩目を1段目の踏面に左下肢を乗せ、その後1足1段とし、10回施行した。5cm、10cmおよび15cmの階段昇段時における拇趾-踏面間距離の測定は別々の日に行われた。拇趾-踏面間距離は1段目の左下肢、2段目の右下肢、3段目の左下肢をそれぞれ測定し、被験者ごとに平均値を算出し、代表値とした。統計処理は有意水準5%として対応のあるt検定を用いた。
【結果】5cmの階段昇段時における拇趾-床間距離は、1段目が4.2±0.8cm、2段目が5.9±1.2cm、3段目が4.2±1.1cmであり、平均4.8cmであった。10cmの階段昇段時における拇趾-床間距離は、1段目が5.3±1.3cm、2段目が5.7±1.2cm、3段目が4.5±1.0cmであり、平均5.2cmであった。15cmの階段昇段時における拇趾-床間距離は、1段目が4.8±1.4cm、2段目が4.3±0.8cm、3段目が4.6±0.8cmであり、平均4.6cmであり、5cmおよび15cmの階段昇段における拇趾-床間距離に有意差が認められなかった。
【考察】本結果から、今回使用した蹴上げ5cm、10cmおよび15cmの階段昇段時は、拇趾-床間距離が4.2~5.9cmと狭い範囲であり、それぞれ有意な差が認められなかった。このことから階段昇段時は、蹴上げ高に影響されず拇趾-床間距離をほぼ一定に保たれていることが示唆された。
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© 2005 日本理学療法士協会
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