抄録
【はじめに】近年の研究において高齢者の下肢機能低下は、能力障害の発生、介護施設への入所、死亡の主たるリスク要因として報告されている。下肢機能を評価方法として、パフォーマンステスト(Pf-test)の有用性が報告されている。Pf-testの利点は、高額な機器を使用せずに、場所を限定せず、被験者への身体的・精神的負担をかけずに機能的制限を評価できることである。しかし、それぞれのPf-testは下肢機能の一側面をあらわしており、そのテストのみで身体機能すべてを反映していると考えるのは多少無理があるように感じられる。そこで、本研究では、いくつかのPf-testからそれらの総合得点値を求め、下肢運動機能を総合的に表す指標を提示する。また、転倒に関する自己効力感と活動状況との関連性から、下肢運動機能指標が有用であるか検討した。
【方法】被験者は地域在住高齢者24人(男性12名、女性12名)。平均年齢73.92±6.4才、平均身長1.5±0.1m、平均体重52.33±9.3kg。下肢機能評価指標は、Pf-testから求める。Pf-testは、握力、CS-30,Timed up and go test,ステッピングテスト,30秒間静止立位時の足圧中心(COP)動揺検査を実施した。また、活動状態を把握するために老研式活動能力指標、転倒に関する自己効力感を把握するためにHellstromらによるfalls efficacy scale(FES)を測定した。
【解析】年齢、身長、体重、BMI、各Pf-testの測定値を変数とし、主成分分析を実施した。なおCOP動揺検査は、総軌跡長、外周面積、実効値面積、単位面積軌跡長、X軸・Y軸の低周波数帯域・高周波数帯域面積比を評価パラメータした。各主成分得点と老研式活動能力指標、FESとの相関を求めた。さらに、老研式活動能力指標、FESを従属変数とし、年齢、各主成分得点を独立変数としてステップワイズ回帰分析を行い、説明変数の影響度を検討した。
【結果】第1主成分はPf-testの総合特性値を示す変量、第2主成分は体格を示す変量、第3主成分は肥満度と筋力を示す変量と推測できる。寄与率は第1主成分 34.7%、第2主成分 16.6%、第3主成分 15.7%、累積寄与率 66.9%であった。第1主成分得点と老研式活動能力指標(r=-0.41, p<0.05)、第1主成分得点とFES(r=-0.81, p<0.001)との間に相関が認められた。ステップワイズ回帰分析では老研式活動能力指標に対しては第1主成分得点、FESに対しては第1主成分得点が説明変数として採択された。
【結論】本研究で得られた第1主成分得点は、下肢運動機能を表す指標であり、転倒に関する自己効力感や活動との高い関連性が確認された。第1主成分得点は、下肢運動機能を総合的に表す指標として有用である。