理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 614
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物理療法
痙性筋に対する電気療法(EMS)の治療経験
*大濱 将立花 修平毛利 博隆岸本 絵里真喜屋 賢二仲栄真 勝千知岩 伸匡金澤 寿久嶋田 智明
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抄録

【目的】電気刺激は痙性抑制に効果があると言われているが、一般に使用されている痙性の評価は尺度間隔が大きく、臨床での変化を鋭敏に捉えることができないため、その効果の検証は未だ十分とはいえない。そこで今回、脳卒中片麻痺患者の下腿三頭筋の痙性に対し電気療法を実施し、臨床的で簡便に評価できる歩行を分析することでその効果を検証した。
【対象と方法】脳血管障害により麻痺側下腿三頭筋に痙性が出現しているが、裸足で監視歩行以上が可能な患者4例(平均年齢47.5±20.85歳)に対し総合電流刺激装置(伊藤超短波製、ES-520)のEMSモードを拮抗筋である前脛骨筋に対して刺激頻度50Hz刺激時間13.0秒、休息20.0秒で施行した。期間・頻度としては運動療法+電気療法、運動療法のみを、1日おきに12日間(電気治療回数6回、理学療法の最終プログラムとして)、1回20分間実施した。評価項目は裸足での10m最大歩行時間(以下、速歩時間)、歩数、足関節背屈可動域、足部のひっかかり回数、Modifield Ashworth Scaleを理学療法実施前、実施後に測定した。また1例のみであるが後日、12日間、理学療法開始時に下腿三頭筋に直接電気刺激を与え実施前後で前述した評価を行った。尚、統計処理としてt検定を用い、実施前後の速歩時間の検証を試みた。
【結果】運動療法+電気療法実施日(以下、電気療法群)、運動療法のみ実施日(以下、運療群)の実施前後の速歩時間では、いずれも僅かではあるが時間短縮する傾向があり、電気療法群では(p<0.01)、運療群では(p<0.05)で有意差を認めた。Modifield Ashworth Scale、足関節背屈可動域にはほとんど変化がなく、歩数、足部のひっかかり回数は若干の改善傾向は示すものの電気療法との因果関係は見られなかった。下腿三頭筋に直接実施した例では、実施前後の速歩時間の短縮に有意差を認めた(p<0.01)。
【考察】今回、電気療法群の方がより高い水準で速歩時間が短縮する傾向にあったことから、拮抗筋に対する電気療法によって、相反抑制が働き即時的に痙性抑制効果が生じたと推察され、また痙性筋に直接刺激を加えた場合もIb線維の興奮による即時的な痙性抑制効果は生じるものと推察された。即時効果が得られるのであれば今回のように理学療法の最終プログラムとして組むのではなく、運動療法の前段階で実施し痙性を抑制させ、できるだけ正常に近い運動パターンを学習させる方が効果的であると考えられた。また今回の結果では速歩時間以外は著明な差は得られなかったため、今後は筋の性状の変化を捉える評価や歩幅、持久性などの評価を加え、より痙性に対する効果を述べられるよう研究を重ねていきたい。

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© 2005 日本理学療法士協会
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