抄録
【目的】超音波(以下US)は、物理的刺激の一つで、生体へのUSの効果は、温熱効果と機械的効果の2種類あるとされている。US療法は、物理療法の中で温熱療法の一つとして位置づけられ、主に温熱効果が期待されているが、実際は機械的効果も存在し、その効果を明確に分けて研究したものは少ない。本研究では、US照射によるカエルの皮膚の水分子透過性の変化を、温熱作用と機械的作用に分けて検討し、USの機械的効果を確認することを目的とした。
【方法】対象は、ウシガエル(体重:200~250 g)の腹部の皮膚(有効直径:2.9 cm)10枚とした。USプローブを上向きに固定し、水漏れが無いように合成樹脂製の円筒にプローブを差し込んだ(以下容器L)。合成樹脂で逆T字状の筒(ロート様)を作製し(以下容器S)、その底にカエルの皮膚内側が下になるように取り付けた。容器Sの底がプローブの表面より上部3.8 cmになるように容器Sを容器Lの中に固定した。容器Lの中にはリンガー氏液を入れ、容器Sの中には煮沸脱気水を液面が容器Lの液面より上部4.2 cmになるように入れた。水分子透過性変化の指標として、容器S内の液面の高さを、スコープを用いて0.1 mmスケールで読み取って記録した。一枚のカエルの皮膚に対して、刺激なし、US照射、加温水の3種類の条件での液面の高さを記録した。各計測時間は10分とし、記録は計測開始時から1分後と10分後に行った。US照射条件は、周波数1 MHz、強度0.5 W/cm2、10分間(連続波)とした。加温水は、容器Lの10分間の平均液温を、刺激なしに比べて2.9±0.6°C(上記のUS照射による温度上昇と同程度)上昇させた。各条件において、1分後の値と10分後の値との差を求め、計測時間内の変化値を求めた。個体別に「US照射/刺激なし」、「加温水/刺激なし」の比を求め、10固体の平均値で比較を行った。
【結果】3種類すべての条件において、計測開始時より容器S内の液面は下降した。「US照射/刺激なし」は1.11±0.31、「加温水/刺激なし」は0.90±0.17であった。「US照射/刺激なし」と「加温水/刺激なし」との2群間において、対応のあるt検定で、有意差が認められた。
【考察】本研究の結果より、個体内で各条件の測定値を比べたところ、US照射は刺激なしに比べて、液面下降値が増加し、逆に、加温水は刺激なしに比べて、下降値が減少した。加温水とUS照射の結果が相反するものであったため、US照射の機械的効果は存在すると考えられる。機械的作用として、振動自体による押し込み圧と振動による組織への影響が考えられる。本実験において、押し込み圧が影響すると考えると、液面下降値が減少するはずであるが、US照射は刺激なしより液面下降が大きかった。つまり、振動により組織が何らかの影響を受け、水分子の透過性が増加した。