抄録
【目的】第39回理学療法学術大会において,超短波照射方法(コンデンサー法,コイル法)の違いによる筋組織内血液量の変動の違いを報告した.今回の目的は,コンデンサー法を用いて,2つの出力設定で超短波照射をした際の筋組織内の循環動態を評価することである.近赤外線分光法を用いて,深部組織内の血液量を反映する総ヘモグロビン(Total-Hb)を測定した.
【方法】研究の同意を得た下肢に障害既往のない健常成人26名(男性22名,女性4名,年齢21.3±2.7歳,身長167.3±7.6cm,体重65.9±12.6kg,体脂肪率23.3±7.1%)を対象とした.超短波は,超短波治療器(伊藤超短波社製,SW-180)を用いて連続モード80W(12名)と40W(14名)で10分間照射した.測定肢位は腹臥位とし,近赤外線分光器のプローブを右腓腹筋内側頭の筋腹中央の皮膚上に取り付けた.照射前後10分間の計30分間を5分間隔に分割して解析した.両下腿での皮膚表面温度(ST)は熱画像測定器を用いて,測定開始前,照射直前・直後および照射10分後に測定した.STは,32-44度の範囲を解析対象とした.
【結果】Total-Hb値は区間毎に積分値,またSTは各画像の最大値と平均値を算出した.80Wと40WのTotal-Hbの積分値は,照射開始時から時間経過と伴に増加し,測定開始0-5分間に比べて照射後5-10分間は有意に増加した(p<0.01).80Wと40Wの積分値の変化パターンに著明な変化は見られなかった.STの最大値と平均値においても,出力の違いによる変化パターンの差は見られなかった.80Wと40Wの出力ともに,最大値と平均値は照射直後で照射前に比べ有意に高いSTを示した (p<0.01).
【考察】超短波照射80WによるTotal-Hbの積分値の増加パターンは,今までの実験結果と同じ傾向にあった.観察時間内において,超短波照射80Wと40Wの出力の違いにより,Total-Hbの積分値の増加およびSTの増加パターンに差が無いことが示された.STの上昇に差が見られなかったことは,超短波のエネルギーが皮膚組織や皮下脂肪組織で,出力の違いに関係なく同程度吸収されたことを示唆している.超短波照射80Wでは,照射後約75分で血液量の変動が最大となることをWCPT14thで報告しており,循環反応が時間単位で起こると考えられる.したがって,今回の分単位の測定時間内では80Wと40Wの出力の違いによる血液量の変動の差を確認できなかったと推察された.